2023年より成形品質向上に関しての取り組みについて、紹介を行わせていただいております。
初回で、取り組み全般の概要をご紹介。2回目から4回目は、これまで取り組みを行ってきたなかで、広くお役に立てそうなピンポイント情報を取り上げ、5回目は少し趣向を変え、「成形品質クイック診断(樹脂)」の数年間にわたる評価結果蓄積から業界における、成形品質作りこみの取組みの進み具合をお伝えしました。
※過去の紹介ブログについては巻末のリンクを参照
6回目からは昨今話題となっているAIの取り組みに関してお伝えを始めました。7回目の今回もAIに関しての話をお伝えしようかと思います。
昨年度状況について、振返ってみようかと思います。
昨年度前半あたりで業界内の企業様に個別ヒアリングをかけさせていただきました。成形業界におけるAI活用は関心は高いが、実際の適用はまだ限定的な段階であることが確認されました。
適用が期待されている領域に関しては下記があげられていました。
本年度は適用状況としてどのように進んでいるものでしょう?少し紹介していきます。
新規成形部品の立上げにおいては、製品配置やスライド機構の選定など、金型仕様を決定するための判断が必要となります。これらの判断はこれまで経験豊富な技術者の知見に依存する部分が大きく、まずはそのノウハウを形式知化していくことが重要になります。
この領域では、製品形状そのものが判断の起点となるため、文章生成を得意とする生成AIよりも、製品形状情報を入力として最適な型仕様を類推する仕組みの方が適していると考えられます。過去部品の形状情報と、その際に選定された型仕様を関連付けて学習させることで、新規製品に対して類似事例をもとに型仕様を提案する仕組みの構築が期待できます。
また、DFM(Design for Manufacturing)活動においても同様の考え方が適用できます。これまでベテラン技術者は製品形状を見ただけで、変形、外観不良、離型不良、型部品破損といった潜在的な問題を予測し、設計レビュー(DR)の場で重要な役割を果たしてきました。
こうした判断も製品形状に基づくものであるため、生成AIを活用するというよりは、製品形状と過去に発生した成形不具合・金型不具合との関係を学習する仕組みが有効と考えられます。新規部品の形状情報を入力することで、想定される問題点や注意箇所を早期に抽出し、生産準備段階での品質リスク低減につなげることが可能になります。

成形条件の算出では、製品形状、型仕様、材料特性、成形条件と、最終的な寸法・外観品質との関係を総合的に考慮する必要があります。
この領域は、形状情報と多数の数値データの関連性を扱うため、生成AIが必ずしも適した適用先とは言えません。また、単純な相関関係だけでは十分な精度を得られず、品質に影響を与える因果関係まで考慮した分析が求められます。
そのため、成形条件の最適化においては、生成AIではなく、物理法則や実績データ、統計解析、シミュレーションなどを活用した別のAI・データ活用手法を適用していくことが重要になります。

このようにいくつか適用していることを垣間見てきております。しかし、順風満帆とはいかず何事も進めていくと諸問題にぶち当たります。そのあたりの問題も少し紹介していきます。
AI活用を進めるうえで、最も大きな課題となるのが学習データの問題です。まず、AIの学習に必要なデータが十分に蓄積されているかを確認する必要があります。また、蓄積されていたとしても、データ形式や管理方法の問題から再利用が難しいケースも少なくありません。
さらに、品質問題や不具合を予測するモデルを構築するためにはNGデータの存在が重要ですが、実際にはNG品の発生件数が少ない、あるいは記録が十分に残されていないことが多く、学習用データの確保が大きなハードルとなります。
このように、AI導入ではアルゴリズム以前に、「十分な量のデータがあるか」「再利用可能な形で管理されているか」「NGデータを収集できるか」といったデータ基盤の整備が成否を左右する重要な課題となります。
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