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成形品質向上のありたい姿とは?「出図前の成形品質作りこみ」編
電通総研が提供する成形品質向上の仕組み紹介(4)

昨年(2023年)より成形品質向上に関しての取り組みについて、紹介を行わせていただいております。

初回で、取り組み全般の概要をご紹介。2回目と3回目は、これまで取り組みを行ってきたなかで、広くお役に立てそうなピンポイント情報を取り上げました。4回目の今回も、ピンポイントの情報を取り上げていこうかと思います。

今回のテーマは、出図前の成形品質作りこみに関する事柄をお伝えしていこうかと思います。

出図前に品質確保を行う上での問題点

現在、製品設計段階での成形性検証にはいくつかの重要な問題点が存在しています。特に、出図期限を守る必要があるため、短期間での処理が求められているのは、多くの企業で共通ではないでしょうか?(図1)

図1:短期間での処理を求められる現状

対象部品点数が多いため、対象部品に対して必要な検証をやりきれているとそうではありません。分業が進んでいる現在では、この仕事に対して、ベテラン知見に依存している企業様も多く見受けられます。彼らの経験は貴重ですが、全てを彼らに任せてしまうと、チーム全体のスキル向上が妨げられる恐れがあります。

さらに、検証基準のばらつきも大きな課題です。各メンバーが異なる基準で作業を進めているため、検証の品質にばらつきが生じ、最終的な結果に影響を及ぼしています。

このような状況を改善するためには、明確な基準を設け、それをルール化して展開することが不可欠です。

これらの問題点を解決するための一つの方法として、標準化と自動化による評価の仕組みを導入することが考えられます。

対策の進め方

1. ベテラン知見の形式知化

ベテラン社員が持つ豊富な経験や知識を形式知として見える化(図2)し、組織全体で共有することが重要です。

図2:ベテランが持つ経験を形式知化する

これにより、以下の効果が期待できます。

知識の継承:
ベテラン社員が退職した場合でも、その知見を後輩や新入社員が活用できるようにします。
業務の標準化:
形式知化された情報を基に業務プロセスを標準化し、効率的な業務運営を実現します。
教育・研修の充実:
形式知を活用した教育プログラムを整備し、社員のスキル向上を図ります。

2. 判断基準の策定

成形品質における判断基準を明確にすることで、意思決定の迅速化と一貫性を確保します。具体的な施策としては以下の点が挙げられます。(図3)

図3:ベテラン知見を軸に判断基準を策定する
定量基準の策定:
各品質要件における判断基準を明確にし、全社員が共通の基準でOK/NGを判断できるようにします。
定期的な見直し:
判断基準を基に立ち上げた実部品のトライ・生産を通じ、測定情報を収集し、実測データを基に判断基準を定期的に見直し、最新の情報を反映させます。
教育の実施:
判断基準に基づいた意思決定ができるよう、設計者向けの教育を実施します。

3. 成形性確認の自動化

製品の成形性を確認するプロセスを自動化することで、効率化と精度向上を図ります。(図4)具体的なアプローチは以下の通りです。

図4:成形要件の自動確認
自動評価システムの導入:
自動でシミュレーションするシステムを導入し、効率的に成形品の形状や外観品質を予測できるようにします。
データ分析の活用:
取得したデータを分析し、成形性に関する傾向や問題点を可視化します。これにより、迅速な改善策の立案が可能となります。
フィードバックループの構築:
データ分析による成形性確認の結果を基に、予測モデルの判断基準改善を行い、継続的な品質向上を目指します。

まとめ

これらの対策を講じることで、組織全体の知識の活用と業務の効率化を図り、競争力の向上に寄与することが期待されます。各施策の実施にあたっては、関係者の協力を得ながら進めていくことが重要です。

成形品質に対しての自動チェックの仕組みには多くの利点がありますが、課題もあります。例えば、CAEベースでの検証では、まだまだ時間がかかってしまうという問題があります。CAEは非常に強力なツールであり、設計段階でのシミュレーションや解析に役立ちますが、その計算には多くの時間を要することがしばしばです。

さらに、CAEでは検出できそうもない成形問題点も存在します。例えば、微細な表面欠陥や材料の微妙な不均一性など、実際の製造プロセスでしか明らかにならない問題があるのです。これらの問題は、現場での実際の試作やテストを通じて初めて発見されることが多く、CAEだけでは完全にカバーすることが難しいです。

これらの課題を克服するためには、CAEと他の仕組みを組み合わせたアプローチが必要です。CAEの強力な解析能力を活用しつつ、現場での実際のデータをフィードバックすることで、より精度の高い品質管理が可能となります。

検証時間の短縮、CAEだけではカバーできない予測モデルの構築の一つの策としてAIの活用も考えられます。成形分野でのAI活用を視野に入れている方々もおられるかと思います。来年あたりにAI×成形というテーマにて出稿させていただこうかと考えております。


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