より良い製品を作ろうとすればするほど、製品は高度化し、複雑性は増すばかりです。開発・設計フェーズにおいては複雑化・高難易度化した課題に対応するため、組織が細分化される傾向にあります。
これまでは担当領域を細分化し、技術を深耕することで対応してきましたが、労働人口の減少や異業種からの新規参入、新しい技術の獲得など、我々を取り巻く環境は日々変わり、その変化への対応を求められています。
これらの課題・問題に立ち向かうためには今までのやり方の延長線上に答えを求めることに加え、新しい手法・仕組みを取り入れることが重要です。
課題に対応するアプローチは様々ですが、最も基本的なものはこちらの図にある、Vプロセスと呼ばれる手法です。
このVプロセスは、複雑なシステム開発において広く使われている手法で、システムとして達成すべき要求と制約条件からシステムの機能を段階的に分割し、さらにユニット、コンポーネントに段階的に詳細化していきます。また、分割された要素を統合し、システムを作り上げていくとき、それぞれの設計が要求された機能を充足していることをチェックし、最終的には、システムの中に組み込まれた運用状態の試験で検証することが求められます。このVプロセスによって、工程ごとにどのような検討・検証を行うべきかを明確化できるという事は、製造業、あるいは開発業務に携わる多くの方がご存じのことと思います。
しかし、製造業の設計開発においては、勘や経験、前機種や前任担当の手法の踏襲といったように、明確な根拠を持たずに曖昧に決まっていることが多く、しかもその繋がりが特定の人の頭の中だけにあってすべてをV字のようにつなげる事が出来ないという課題があります。
そのため、例えばプロセスのスタートである要求から次の工程である設計仕様の根拠が必ずしもつながっていない事態が発生しても、誰もその指摘をすることが出来ず、そのまま後続の工程が進みます。そして、最終工程である妥当性確認まできてはじめて当初の要求を満たせていないことに気づき、結果的に大きな手戻りとなってしまうという事態を招きます。
このようなこのような「ン」の字プロセスを改善し、「V」プロセスに変えていくには、システム思考が重要で、それをプロセスとして定義したのがMBSE・システムズエンジニアリングです。
システムズエンジニアリング(SE)
システムズエンジニアリングは、システムを成功裏に実現するための、学術的なアプローチおよび手段である。システムズエンジニアリングでは次のことに重点を置く。顧客のニーズおよび必要とされる機能性を開発サイクル初期に定義し、要求を文章化し、そのうえで設計、統合しシステムの妥当性確認に進むことである。そこでは、運用、コストおよびスケジュール、遂行能力、トレーニングおよびサポート、テスト、製造、および廃棄といった問題すべてを検討する。システムズエンジニアリングは、すべての分野および専門グループをチームの取組に統合し、コンセプトから、生産、運用へとつながる構造化された開発プロセスを形づくる。システムズエンジニアリングは、ユーザのニーズを満たす品質の製品を提供するという目標に向かって、すべての顧客のビジネスおよび技術の両方のニーズを考慮する。
(INCOSE,2004)システムズエンジニアリング ハンドブック 第4版より
MBSE(Model Based Systems Engineering)
システムズエンジニアリングに対するアプローチ方法の一つで、これまでに多くのプロジェクトで採用されてきた文章ベースアプローチがドキュメントの生成と管理に重点を置いていることに対し、モデルベースアプローチでは一貫したシステムモデルの生成と管理に重点を置いている。またMBSEはMB+SEであるため、モデルを使ってシステムズエンジニアリングを行うこととも言える。
電通総研は以前よりMBSE(Model Based Systems Engineering)・システムズエンジニアリング関連のソリューションを提供しておりますが、これまでの導入事例や海外の成功事例などを分析し、何度も議論を重ね、改めて『実践できるシンプルなMBSE』としてソリューションをまとめています。
以下のコンテンツは2023年11月28日に実施したセミナー「欧州最新事例とサステナブルMBSEの実践方法」で発表したものです。
オーストリアのPalfinger社においてMBSEを推進するZingel氏によるセッションです。(通訳あり)
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電通総研の設立からこれまでの経験や情報・ケイパビリティをMBSE・システムズエンジニアリングに付加することでプロセスの実現性と業務への定着、実施する人のモチベーションを高めていきます。