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なぜFMEA(故障モード影響解析)は形骸化するのか。継続できる不具合未然防止活動とは?

業務改善や効率化、製品・プロセス品質の向上を支援すること25年。お客様の様々な問題や課題をお聞きしてきました。その中でも多く聞こえるのがFMEA(故障モード影響解析)の形骸化です。「取引先から出せと言われるので作成している」、「DR(デザインレビュー)で必要なので作成している」。本来の目的と役割が見失われ、単に帳票を作成するだけになっている。あなたの会社でも起きているのではないでしょうか。

FMEA(故障モード影響解析)とは?その目的は?

FMEA(Failure Modes and Effects Analysis)は、システム、プロセス、製品、サービスなどの設計や製造、運用において、潜在的な障害やリスクを特定し、それに対処するための手法です。FMEAは、問題が発生した際の影響を最小限に抑え、品質や信頼性を向上させることを目的としています。

FMEAの基本的な実施手順は次の通りです。

  • STEP
    1

    システムやプロセスの識別
    FMEAの対象となるシステム、プロセス、製品、部品などを明確に識別します。
  • STEP
    2

    潜在的な障害の特定
    潜在的な障害(故障モード)を洗い出し、その要因を特定します。
  • STEP
    3

    障害の影響の評価
    各障害の影響や結果を評価し、それがお客様やプロセスにどのような影響を及ぼすかを明確にします。
  • STEP
    4

    障害の頻度の評価
    各障害が発生する頻度を評価します。
  • STEP
    5

    障害の発見から回避までの検出可能性の評価
    各障害が発生してからそれを検出するまでの検出可能性を評価します。
  • STEP
    6

    リスク優先度の計算
    障害の影響、発生頻度、検出可能性を総合的に考慮してリスク優先度を計算します。これにより、対処の優先順位を付けることになります。
  • STEP
    7

    対策の策定
    リスクが高い順に対策を策定し、実行可能性や効果を検証します。

FMEA(故障モード影響解析)が形骸化する原因は?

形骸化(けいがいか)とは、本来の目的や意義を見失い、形式・手段だけが残っている状態を指します。形式を取っているだけなので、実質的な効果を期待することができず、義務履行となります。こうなると、作業者は手数をかけずに作業を終わらせることを最優先に考えるため、前の機種で作成したものを使いまわしたり、雛形を作って気が付いた項目だけを追加して、あたかも検討したそぶりをしたりすることが平然と行われるようになります。このような場合、無駄な負荷になっているため、実施しない方が得策となります。

では、なぜFMEAの形骸化は起きるのでしょうか。様々な意見や見解があるとは思いますが、ここでは5つの要因を挙げてみたいと思います。

  • ルーチン化している
    FMEAが形式的な手続きとして見なされ、その作業が単なるチェックリストの項目になっているため、綿密な検討やリアルな改善提案がなされなくなり、形骸化の傾向が高まります。
  • 情報が更新されていない
    FMEAはプロジェクトや製品が進化するにつれて更新される必要があるが、この更新のプロセスを怠ると、古い情報やリスクが見逃され、FMEAが現実的なものではなくなります。
  • チームの協力が不足している
    FMEAの実施には複数部門を跨いだチームの協力が不可欠であるが、関連する専門家やステークホルダーが不足し、適切なリスク評価や改善提案が得られない。当然、FMEAが形骸化します。
  • トレーニングが不足している
    FMEAは専門的なスキルと知識が必要にも関わらず、十分なトレーニングを受けていないと、適切なリスクの識別や評価が行えず、FMEAが形骸化します。
  • 悪い組織文化が影響している
    「結果が全て」「最終的に製品が予定している品質を満たせば問題ない」といった誤解を組織の文化として持っているとFMEAの結果が真剣に受け止められず、実際の改善に結びつかないため、形骸化が進みます。

実際にはこれらが単発ではなく、例えば

  1. FMEAのトレーニングが不十分
  2. その本質・意義の理解ができていないまま業務着手
  3. 作業としてこなす(ルーチン化)
  4. チームへの協力も十分にできず
  5. FMEAが形骸化する
  6. 情報が更新されなくなるためFMEAが非現実的なものとなるが
  7. 組織としては結果が出れば問題ないため自己修復は起きない

といった具合に連鎖することが往々にして起きていると思います。

FMEAの形骸化を防ぎ、継続する方法とは?

FMEAの形骸化の原因は前述の5つであると仮定すると、その改善がFMEAの形骸化を防ぎ、FMEAが単なる文書作業ではなく、実践的な成果を生むことになります。

ここでは改善案を4つにまとめています)

  • 定期的なレビューと更新(vs.ルーチン化、情報の陳腐化)
    FMEAは状況や環境に対して常に適応する必要があります。定期的なレビューや更新を行い、新しい情報やリスクを絶えず考慮することが重要です。特に、主観的な意見や先入観に左右されないようにすることと、暗黙知を形式知化し、客観的に評価することが重要です。
  • 部門横断チームの参加(vs.協力不足)
    FMEAは異なる専門分野からの意見と知識が組み合わさることで効果を発揮します。関連する部門や担当者を広く巻き込むことで、より包括的で妥当なリスク評価が可能となります。
  • 啓蒙とトレーニング(スキル不足)
    関係者に対してFMEAのトレーニングや教育を提供し、手法やその意義を理解してもらうことが重要です。適切なトレーニングを受けたメンバーがFMEAを実施することで、より質の高い評価が行えます。
  • プロセス品質の重視(vs.悪い文化)
    良い結果を得るためには、結果を生み出すプロセスが重要です。FMEAに限った話ではありませんが、製品品質を作り込むためのプロセスを重視する文化の醸成が必要です。FMEAの結果から得られた改善提案を実際のプロセスやシステムに反映させ、効果を確認することが可能になります。

しかし、これではFMEAの形骸化は防ぐことはできても、継続化は難しいと考えられます。なぜなら、これまではFMEAが形骸化していたので極端に言えばあまり工数をかけていなかったはずですが、FMEAが価値あるものになることで、投入する工数が増えることになります。納期・期間が変わらなければ、継続することができず、また形骸化してしまいます。

ITツールによるモデル化とAIの活用が継続化のポイント

ITツールは作業の効率向上やデータの管理に役立ち、特に大規模なプロジェクトや組織では手動よりも効果的になります。また、「モデル」の概念を持ち込む=モデルベースで考えることで暗黙知を形式知に換える効果も生みます。

(モデル化とその効能については「実践できるシンプルなMBSE・システムズエンジニアリング」をご覧ください。)

構造モデル・機能モデル・故障モデルなどの構築により、AIAG/VDAの新フォーマットなどのこれまでとは異なるフォーマットへの追従も容易になります。

一方、近年目まぐるしく発展するAIは担当者の不足しているスキルや知見を補うことができ、ヌケモレ防止に効果的です。AIの示唆を受けて作成されたFMEAは担当者に新たな経験と知識を与え、且つAIも学習するため、人間とAI双方の成長も促すことを可能とします。

この2つの機能を合わせ持つソリューションが「iQUAVIS」です。あるお客様では「iQUAVIS」の導入により、「これまで3カ月かかっていた作業を1週間で実施できるようになった」と言われています。

FMEAの形骸化は長きにわたって日本企業の悩みのタネであると思います。しかし、時代の進歩と共にその解決も現実的なものとなっています。ぜひこの機会にFMEAの形骸化に立ち向かってみませんか?

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