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MBEとは?製造業のものづくりを変えるメリットと事例をご紹介

序章

製造業では、グローバル競争の激化、人材不足、サプライチェーンの複雑化などにより、従来のやり方では対応しにくい課題が増えています。こうした背景の中で、近年、MBE(Model Based Enterprise)は、設計と製造の情報連携を見直す手段として注目されています。各社で導入検討が進んでいるほか、業界団体でも標準化に向けた議論が進んでいます。

「2次元の図面文化から脱却し、3Dモデルを中心としたものづくりへ」----これがMBEの基本的な考え方です。本記事では、MBEの概要から3DAモデル活用のメリット、導入を進めるためのポイントまでを整理してご紹介します。

MBE(Model Based Enterprise)とは何か

MBEとは、設計から製造、検査、保守に至るまで、3Dモデルを唯一の正しい情報源(Single Source of Truth)として運用する考え方です。

従来の製造業では、設計部門が3D CADでモデルを作成しても、製造や検査の現場では2D図面に変換して使用するのが一般的でした。しかしこの方法では、図面化に工数がかかるうえ、情報伝達のミスや部門間の認識ずれが起きやすいという課題がありました。

MBEでは、3Dモデルに寸法、公差、表面性状、材質などの製品製造情報(PMI:Product Manufacturing Information)を付与し、その3Dモデル自体を「正」として扱います。これにより、設計から製造、品質保証、サービスまで、組織全体が同じ情報を共有しやすくなります。

3Dモデルに製品・製造情報を付加しておくことで、将来的なAI活用や設計開発の高度化にもつながります。電通総研では、こうした観点から、MBEは設計開発環境の基盤を整える上で有効な取り組みだと考えています。

MBEは一気に完成するものではなく、段階的に進める取り組みです。MBE導入の成熟度は、レベル0〜6で評価でき、NIST(米国標準技術研究所)が提唱したフレームワークがベースになっています。

電通総研ではお客様の現状把握や他社・先行企業との差異確認のためにMBE成熟度分析をご支援しています。以下はMBEレベル0〜6を簡易的に整理したものです。

  • レベル0:2D図面のみで3Dモデルを利用していない

  • レベル1:3Dモデル(STEP等の中間フォーマット)は存在するが、2D図面が依然として正

  • レベル2:3Dモデルに加え簡略な2D図面を併用している

  • レベル3:セマンティックなPMI付き3Dモデル(3DA:3D Annotated Model)。3Dを正のデータとして管理し、製造用途で活用できる

  • レベル4:認証・認定された3DAモデルを正のデータとして管理し、製造・検査のソースとして活用できる

  • レベル5:企業全体で信頼性のあるデジタル製品定義データセットを3DAモデルを中心に管理している

  • レベル6:サプライヤーを含む取引先とも3DAモデルで業務を遂行している

電通総研が支援する多くの企業では現状としてレベル1〜2に位置付けられるケースが多く、今後はレベル3以上を目指す動きが活発化しています。

MBEのメリット 3DAモデルの活用で変わる設計・製造現場

3DAモデル(3D Annotated Model)とは、3D形状データに寸法、公差、表面粗さ、材料、注記などの製品製造情報(PMI)を付加した3Dモデルのことです。図面を介さず、3Dモデルだけで製造に必要な情報を共有できるため、MBE推進の中核を担う存在です。

MBE導入による主なメリットとして、以下の5つが挙げられます。

  1. 設計から製造までのリードタイム短縮
    2D図面化の工程が不要になることで、設計から製造への情報伝達がスピーディーになります。図面作成にかかる時間は製品によっては数十時間から数百時間に及ぶこともあり、その削減効果は小さくありません。開発期間全体の短縮にもつながります。

  2. 部門間のコミュニケーションロス削減
    3Dモデルは形状を直感的に理解しやすいため、設計者、製造技術者、検査担当者、営業担当者など、専門知識のレベルが異なるメンバー間でも認識のずれが起きにくくなります。海外拠点とのやり取りにおいても、言語の壁を越えて情報を共有しやすい点は大きな強みです。
    特に、製造・検査・海外拠点とのやり取りでは、説明資料の作成や会議での認識合わせにかかる負担を減らしやすくなります。

  3. 品質向上・手戻り削減
    PMIが3Dモデルに直接埋め込まれているため、寸法の読み間違いや図面と3Dモデルの不整合といったヒューマンエラーの低減が期待できます。設計変更があった場合も3Dモデルを修正すれば関連情報が一括更新されるため、図面更新漏れによる不具合も防ぎやすくなります。

  4. 製造・検査の自動化推進
    3DAモデルはCAM、CMM(三次元測定機)、ロボットなどの自動化機器や関連システムとのデータ連携に活用できます。プログラム作成の効率化、検査工程の自動化、加工条件の最適化など、スマートファクトリー実現の基盤となります。
    プログラム作成や検査工程の自動化を進める上でも、3DAモデルは前提条件になりつつあります。

  5. データ資産としての活用
    3Dモデルに集約された情報はデジタル資産として蓄積され、類似設計検索やコスト見積りの自動化など、さまざまな用途に活用できます。さらに、AIが活用しやすい情報源として新たな価値創出にもつながります。

MBE推進のため課題と解決策、事例紹介

MBEの理想は理解できても、実際に推進するとなると多くのハードルがあります。ここでは、よくある課題とその解決策を整理します。特に現場の納得感は重要で、ツールを導入するだけでは定着しないケースも少なくありません。

よくある課題

  • 3D CAD/モデルはあるが、PMI付与のルールが未整備
  • 製造現場が2D図面に慣れており、3Dへの抵抗感がある
  • サプライヤーが3Dデータを扱えない
  • 既存の業務プロセス(PLM、ERP)との連携が難しい

解決策

  • 段階的なロードマップを描く
    いきなりレベル6を目指すのではなく、自社の現状レベルを把握したうえで、まずはレベル3や4(3DAモデルを正とする)を目標に据えるなど、段階的に進めることが重要です。小さく成功体験を積み重ねながら、適用範囲を広げていくケースが多くみられます。

  • ルール・標準の整備
    JIS B 0060シリーズなどの規格を参考に、PMI付与ルール、モデリング標準、データ管理ルールなどを社内標準として明文化し、属人化を防ぎます。

  • 教育と現場巻き込み
    設計部門だけでなく、製造・検査・調達部門を巻き込んだ全社的な教育プログラムを実施します。ビューワソフトの提供など、3Dに触れる機会を増やすことも意識改革につながります。

  • PLMや製造システムとの統合
    3DAモデルを中心に据えたPLM(Product Lifecycle Management)の構築により、設計BOMから製造BOM、サービスBOMまでをシームレスにつなぎます。いわゆるデジタルスレッドの考え方です。

電通総研では、こうしたMBE推進をトータルに支援するソリューションを提供しています。MBEの構想策定から運用定着まで数多くの製造業のお客様をサポートしている導入事例もあります。

まとめ

MBE(Model Based Enterprise)は、3Dモデルを企業活動の中心に据えることで、設計・製造・検査・サービスを一気通貫でつなぎ、製造業のものづくりを根本から変革するアプローチです。

  • MBEは6段階のレベルで成熟度を測定できる
  • 3DAモデルの活用により、リードタイム短縮、品質向上、自動化推進が可能
  • 段階的なロードマップ、ルール整備、全社的な教育が推進の鍵
  • すでに国内外の先進企業がMBE適用を進め、成果を上げている

DXが進む中で、MBEは製造業の情報連携を支える重要な取り組みの一つです。今後のAIを活用した業務改革においても、3DAモデルがその中核となることが期待されています。2D図面文化から脱却し、デジタルデータを軸とした新しいものづくりへ。その第一歩として、まずは自社のMBEレベルを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

電通総研では、MBEの考え方から導入アプローチ、関連ソリューションまで幅広く発信しています。MBEの実現に向けた課題やお悩みがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。