電通総研では、生産シミュレータとして、SIEMENS社製のTECNOMATIX Plant Simulationを取り扱っています。
本ブログでは、量産ライン、主にサプライヤからの部品納入、ラインサイドでの部品の引きが定常的に行われる工場の物流課題解決に役立つPlant Simulationの活用例についてご紹介します。
Plant Simulationは仮想空間上に工場を再現することで、人・物の流れをシミュレーションし、生産性向上、仕掛り在庫の削減、水すましの最適化など生産現場で生じる様々な課題の解決を支援する生産シミュレータです。
代表的な活用ケースとしては下記の通りです。
工場内物流には、容易には目に見えない様々な遅延要因が存在します。
交差点の待ち、停止位置での積み下ろし渋滞、横断者によるセンサー停止。
あるいは、搬送指示タイミングが一時的に重なることによる部品到着遅れ。
それらの要素を含め、部品の欠品を防ぐ最適物流計画を立案するためには、生産計画、搬送機台数、積載数、速度、搬送ルート、部品の箱入数、ラインによる消費タイミングなど、多くのパラメータを考慮する必要があります。
また、物流は、工程設計後に検討を開始するため、期間に追われることが多く、結果、余裕を持たせた計画で運用され、その後も結果評価が見えにくいことから、改善が後回しとなり、多くのムダが潜んでいます。
ノウハウを投入して設計された生産ラインでも、物流にムダがあっては、その効果を発揮しきれません。生産システム全体の最適化を目指すには、生産前の精度の高い物流計画の立案や、現状ラインの物流効率の見える化を行う必要があります。
物流に限らず、工場のモノの動きの検証時に難易度を上げる要因は、"時間の流れ"です。
Excelなどのツールを使用した、平面的な検証では、工場の制御や、作業ルールにより、時間とともに変化する複雑なモノの流れを容易に考慮しきれません。
Plant Simulationは、離散系のシミュレーションで、時間の流れによる変化を再現でき、そこから得られるデータの表示、分析が可能です。
また、AGVやフォークリフト、作業者搬送などの標準の搬送機能をカスタマイズし、工場ごとに異なる物流制御をライブラリ化できます。
これにより、生産計画、タクトによる部品の引き、部品要求のタイミング、物流リソースの混雑具合などを考慮した部品供給を正確に再現でき、現状の見える化、施策実施時の事前検証が行えるようになります。
工場によっては、日々何千、何万という製品を生産しています。それに使用する部品数で言えばその数十倍から数百倍というような数になる場合もあります。この部品をサプライヤに発注し、納品、検品、安全在庫を持ち、ラインサイドに運搬し、消費する。
その流れの中で、多くの在庫を抱えています。
それは最少化する必要がありますが、ひとたび間違えると、生産ラインで欠品を起こし、莫大な損害を与えかねず、そのリスクを回避するために、余裕を持った在庫を抱える場合が多くあります。
生産ラインは秒単位で設計され、日々改善が行われていますが、物流も同時に最適化することで、その効果をより発揮することができると考えます。
Plant Simulationを活用することで、物流計画による部品在庫の変化や、搬送稼働率、ラインの欠品停止などが見える化できます。
ラインの稼働率、出来高、作業者計画だけでなく、物流を含めた全体最適を実施することができます。
生産ラインの計画による、各工程での部品の引きを再現することで、ラインサイドの部品棚にある在庫変化を見える化できます。部品の大きさ、箱入数、少量生産仕様の部品など、標準在庫数を定義するために考慮すべき項目は複数あります。
これらの要素を勘案して算出した値が正しいのか、実際の生産計画でどのように在庫数が変化していくのか検証することができます。
工場ごとに定めたKPI(例えば、「部品の納入から、製品として出荷するまでのリードタイムで判断」であったり、「0.5日分の在庫を確保」など)をシミュレーション内に定義することで、要件を満たしているのかグラフやログなどを用いて容易に判断できます。
搬送機、搬送作業者の搬送タイプは、定時定量、定時不定量、定量不定時などがあります。
また、空箱の回収ルールも、実箱を運搬してきた際に回収、空箱回収専用の周回があるなど、生産現場によって様々です。
そして生産現場では、交差点での渋滞、先行搬送機の荷降ろし待ち、歩行者の横断待ちなど、タイミングによって発生する停止時間があります。
これらの搬送ロジックを詳細に再現することで、いつ、誰が、どこに、何を、何個持って、どのルートで運ぶべきかを検証でき、最適な搬送タイプや、どのタイミングで搬送機(搬送作業者)を呼び出すかをロジカルに決定できます。
既存ラインに新機種を混流させる場合、生産ラインは、工数のバラつき、生産順序などを考慮してライン能力の検証を実施します。
新機種により新規部品が発生し、既存機種の生産バランス変化により部品全体の消費バランスも変わるため、物流も同時に検討しないと立ち上げ後に思わぬ手戻りが発生します。
既存ラインを再現したシミュレーションモデルがあれば、容易に新機種流動時の物流検証が行えます。
今回は、量産ライン、主にサプライヤからの部品納入、ラインサイドでの部品の引きが定常的に行われる工場の物流課題解決に役立つPlant Simulationの活用例について御紹介させていただきました。
ご興味があれば、ぜひ弊社までご連絡ください。
引き続きよろしくお願いいたします。
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