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技術伝承/知識活用化(FA実践編)

本稿では、伝承力の高め方、知識活用に向けた指導・助言の仕方をご紹介します。

技術伝承力と技術活用力を鍛える!

技術伝承とは熟練者が長年の経験で培った技術やノウハウを次世代に引き継ぐ活動です。ここで大事なのは単にやり方やノウハウを伝達・受け渡しするだけでは不十分であるということです。なぜならば「伝承したよ、後はよろしく!」で終わってしまうと受け継いだ若手の中にはノウハウを活用できないケースが出てきます。理想をいうと伝承した知識や技術は目的に合わせ活用できる姿になるのが望ましいですよね。そこで伝承力と知識活用力を同時に強化する「伝承プログラム」を開発しました。本プログラムはFA(Functional Approach)を活用しています。

FA (Functional Approach)および暗黙知の引き出し方については、技術伝承における暗黙知の形式知化(FA基礎編)でご説明しておりますので、合わせてお読みいただくとよりわかりやすい内容となっております。ではここからFAを活用した伝承プログラムについて見ていきます。

技術伝承に必要な6つの能力

技術伝承活動では熟練者から若手に知識や技術を伝承します。伝承プログラムでは、技術伝承において伝承者(熟練者)に必要な6つの能力を定めております。(図1)
技術伝承6つの能力とは

  1. 知識伝承・活用化
  2. 自発的な行動・内発的動機付
  3. 特性資質の見極め
  4. 技術技能伝承におけるエンゲージメント
  5. 成長を導く効果的なフィードバック
  6. 挑戦機会創出

になり、30個の能力要素から構成されております。(図2)
まずは伝承プログラムにて6つの能力を向上させ「伝承力/指導力」を養い、本番の伝承活動に挑む流れとなります。

図1:技能伝承6つの能力

図2:能力要素(30個)

「技術を伝承」しながら「技術を活用」できる若手育成

本プログラムでは伝承者(熟練者)は技術を伝承するとともに、技術を活用できる若手の育成も担っております。技術を伝承しながら自立した技術者になるための道筋を示し、若手の成長実感を高める伝承プログラムとし設計しています。

日々の業務では予期せぬトラブルが発生することがありますよね。マニュアルを見ても書いていない・・そんなとき若手は目的から手段を導くことにトライする、高いレベルの物事に挑戦する人材になることを本プログラムでは目指しています。そのためには熟練者は機能(Function)を意識し伝えることを心掛けます。ここで機能という言葉が出てきましたので、機能とは何かについて抑えておきます。日本語では、機能とは幅広い意味合いで使われており概念そのものはきわめて曖昧です。本稿で扱う機能とは「対象が持つ目的達成能力」目的と働き(手段)両方が揃いはじめて成り立つものと定義しています。(図3)
また機能質問の仕方を図4に示します。

         図3:機能の定義                          図4:機能質問

図5は伝承プログラムでの演習「技術伝承 助言の仕方」を抜粋したものになります。演習問題は「熟練者はa.以下のように伝えています。しかし若手は行動をためらい一歩が踏み出せません、また突発的なトラブルに対応できないという悩みを抱えています。若手の悩みを解消できるよう助言し伝承してください」という内容。図5は伝承 助言の仕方/ヒントになります。普段の職場・現場を思い浮かべ再現します。解答例は演習後に配布します。

   図5:演習「技術伝承 助言の仕方」                      図6:伝承 助言の仕方/ヒント

伝承をする際、仕事のやり方または目的どちらか一方だけを伝えただけでは、機能を伝承できたことにはなりません。普段の業務において手段(やり方)だけを伝えている、みなさんもお心当たりはありませんか。技術伝承では、「(目的)何のため」と「(働き/手段)どうやって」勘・コツ・知恵をどのように使ったら良いのか、さらに若手は何を「見て/覚えて/感じて/考え/観察する」と良いのかを指導・助言できるとベストです。若手は機能(Function)を知る/理解することで、予期せぬトラブル発生においても上位の目的から状況や影響度を汲み取り自分の頭で考え対応する力が付きます。図5,6は技術伝承6つの能力「1.知識伝承・活用化」対象の演習になります。本プログラムは6つの能力を習得できるプログラム/テキストがあり、伝承教育の一環としても導入されております。

技術伝承活動をご支援させていただいている企業様成功事例および技術伝承6つの能力の効果検証は人工知能学会で発表した研究論文に掲載しておりますのでご参考いただけますと幸いです。(https://drive.google.com/file/d/1VrG96bDNoNkZwooCFxiFhJi4FXgm1RAw/view
本稿では伝承プログラム習得後に能力が向上した要素について論文を抜粋してご紹介します。ある企業様の実験では図2能力要素(30個)のうち一番効果が高くなったのは「若手の挑戦意欲を掻き立てる工夫をしている」「若手が何に興味・関心があるかを知っている」「若手の得意な点、問題点を熟知している」という結果になりました。その要因は以下になります。

若手の好奇心を掻き立て伝承

伝承プログラムでは「若手の好奇心を掻き立て伝承する」という演習を行います。やり方具体例(テキストに記載)を基に図7の練習をします。技術伝承実践の前にこのような練習を行うことにより、現場での技術伝承に活かされ、若手のモチベーションアップ/技術の活用化につながっております。図7は技術伝承6つの能力「6.挑戦機会創出」対象の演習になります。

図7:若手の好奇心を掻き立て伝承

まとめ

今回ご紹介した伝承プログラムは、技術伝承と同時に若手の育成ができる一挙両得なソリューションです。また技術伝承を実践した後成果を振り返るフェーズをしっかり設けております。良かった点は成功事例として社内に共有し、反省点に対しては対策を練ります。反省点に対する打ち手の講じ方は伝承プログラムにて習得することができます。本プログラムも、機能を重視し開発しております。従って目的「技術伝承6つの能力」に対し、「はいではやってみましょう」ではなく、手段「能力を身に付けるための方法」を用意しています。本稿では一部を抜粋してご紹介させていただきました。

技術伝承/知識活用化(FA実践編)は、暗黙知の形式知化(FA基礎編)、知識昇華(FA応用編)の続きになり、それぞれの教育プログラム/テキストがございます。このブログを読んでいただいている皆さまがもしご興味を持っていただけましたら弊社までご連絡いただけますと幸いです。


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人工知能学会 (SIG-MAKS)にて技術伝承論文を発表しました。

2024年1220日人工知能学会 知識と技能のモデル化と活用研究会(SIG-MAKS)にて「暗黙知抽出・技術技能伝承モデル」研究論文を発表しました。こちらもご参考いただけますと幸いです。