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技術伝承における暗黙知の形式知化(FA基礎編)

本稿では熟練者が長年の経験で培った知識をどうやって引き出すかについてご紹介します。

強いAI実現に向けて

加速するテクノロジーとどう共生していくか。テクノロジーの進化は目覚ましく強いAIをつくるには良質なデータが大前提。いいかえると良質なデータが良質なAIを生みます。

良質なデータとはどんなものなのか。ものづくりで考えてみると熟練者の匠技は、磨き上げられた修練の賜物です。良質なデータとはこれらが形式知化されたものになります。    

形式知化とは単に言語化すればよいというものではなく、誰もが使いやすい形になっているかの視点が重要です。たとえば何かものごとを判断するときに、定量的な数値、五感は感覚的な表現で形式知化されていると未習熟者であっても簡単に行動に移すことができますよね。

では深くカラダに染み込まれた感覚、勘・コツ・知恵をどうやって抽出するか。ここからは明文化されていないファジーな暗黙知を形式知化するFA (Functional Approach)について見ていきます。

ノウハウ抽出/従来とFAの特徴を比較

ノウハウを抽出する際「よくある従来のやり方」と「FA」を比較

図1:ノウハウを抽出する際「よくある従来のやり方」と「FA」を比較

ノウハウを引き出す際、よくある従来のやり方では時間が掛かってしまうのが難点です。また熟練者の深層にあるノウハウは、ヒアリングだけではなかなか引き出すことができません。一方FAは、対象の機能を捉え機能展開することでノウハウの深掘りが容易になります。従って短時間で一気に質の高いノウハウ抽出が可能となります。また機能表現を用いることで読んでわかりやすい日本語となりアウトプットの質も大きく変わります。

FA (Functional Approach)とは即物的(目に見えているカタチ物質を優先する)ではなく機能を捉え問題解決を図るアプローチになります。これを、暗黙知抽出を目的として確立したものがFA暗黙知抽出法(人工知能学会発表)です。深層にあるノウハウを引き出すことはそう容易なことではありません。しかしこの目に見えない暗黙知を捉えるにあたりFAはとても条件に適性質を持っております。

こんな悩みはありませんか

  1. 業務の属人化から脱却できない
  2. ヒアリングに時間をかけたが、なかなかノウハウを引き出せない
  3. マニュアルはあるが、読んでも再現性を担保できない
  4. 仕事が忙しくなかなかノウハウ抽出に時間が取れない
  5. 熟練者が高齢化、退職と同時にノウハウ消失の恐れがある
  6. テクノロジーで活用しているナレッジが古い
  7. 熟練者と未習熟者に差が生じている
  8. 最終仕上げは熟練者の「匠の技」に依存している
  9. 過去にどんな問題がありどのように解決したかわからない
  10. 暗黙知が散在しているが放置状態

FAで一挙解決!

従来のやり方とFAはどんな違いがあるか、これまで多くの企業様でFA効果を測定してきました。今回は大手企業様でFA効果実証実験の結果をご紹介します。

FAなし(従来のやり方)とFAあり(FA活用)効果検証

http://www.sigkst.org/data/default/C2E83433B2F3B8A6B5E6B2F1/SIG-KST-043-03.pdf

図2: FAなし(従来のやり方)とFAあり(FA活用)効果検証

この実験では30分間でノウハウを抽出する際、FAなし(従来のやり方)/FAありを比較し、どのような違いがあるかについて効果を検証。実験からFAを活用することで、①ノウハウ抽出時間/大幅な時間短縮 ②ノウハウ抽出数/飛躍的増加 ③ノウハウ抽出率/改善効果が大きい ④ノウハウの質/大きく向上した という結果となり、なかでも特にお客様から喜ばれるのはノウハウの質です。

熟練者と未習熟者/形式化の留意点

下記はよく目にする状況熟練者と未習熟者の違いになります。

熟練者と未習熟者の違い

図3: 熟練者と未習熟者の違い

では熟練者は実際にどんな行動を取っているのか未習熟者でもわかるようにノウハウを抽出していかなければなりません。ノウハウを引き出したとしても未習熟者が読んで行動に移すことができなければ意味がないため、ノウハウを抽出する前には入念な準備が必要となります。未習熟者が読んで行動に移すことができるノウハウとはどんなものか。まずは形式知化の留意点をしっかり捉えていきます。    

下記は点検作業において未習熟者が行動に移すことができないノウハウ(こんなノウハウを引き出しても意味がないよ!)と形式知化の留意点(未習熟者が行動に移すためにはどんな観点が必要か!及び、ノウハウの例です。

No. 未習熟者が行動に
移せないノウハウ
形式知化の留意点 ノウハウ
1 臭いがないかを確認する どんな臭いだと不味いのか
臭いの発生源、着目箇所
接続部に顔を近づけ薄っすらと焦げ臭いニオイがないかを確認する
2 損傷状態を把握する 破損・損傷の確かめ方 ハンマーで打撃し打音とハンマーの跳ね返りから損傷具合を判断する
3 安全性が保たれているかを判断する 判断するための定量的な数値 季節の温度変化により材料が伸縮する引張り強度を測定する
4 品質異常を見つけ是正する 過去トラブルからの是正措置
情報の保管場所
過去に起きたトラブル事例と対応策は〇〇に保管されており、動画教材は__にアクセスして学ぶことができる
5 安心できるサービスを提供する 具体的に取るべき行動 -

図4: 点検作業 未習熟者が行動に移すことができないノウハウと「形式知化の留意点」

FAでは機能を的確に捉え、機能表現を使い、暗黙知の深掘りをします。次にどんな所に暗黙知がありそうか仮説を立てていきます。しかし仮説はただ立てればよいというものでは全くありません、仮説思考力の高め方が重要です。機能系統図、ノウハウ抽出シートを使い対象の機能からどんな所に暗黙知がありそうか仮説を立て抽出に備えます。暗黙知を抽出する際にはファンクショナル・エンゲージメント、機能質問を活用してノウハウを抽出、形式知化シートにまとめていきます(テキスト形式)。FAは完結した教材がありますのでご興味ある方はぜひお問い合わせください。

上記の後匠技のデジタル化について1つの例をご紹介させていただきます。暗黙知を形式知化した後、モーションキャプチャーシステムを使用し動作・視線を計測・分析を行います。熟練者と未習熟者の動画を比較するだけではなく動作・視線・腕の角度・腰の引き方等細かな数値を解析することでさらなる暗黙知を発見することも珍しくありません。業務の標準化に向け作業工程を見直し規格・評価方法などを統一し業務の効率化を図ります。未習熟者が見て学べる動画教材を制作しより精緻な技術伝承をご支援しております。

技術技能伝承

FAには暗黙知の形式知化(基礎編)知識昇華(応用編)技術技能伝承(実践編)があります。全てが独立したソリューションになっておりどこからでも着手が可能です。知識昇華(応用編)は、抽出した知識または既存の知識を時代のニーズに合わせ新しい知恵や技術に昇華させるものです。技術技能伝承(実践編)では、熟練者の若手指導力を強化し(伝承・伝授)を実践します。テクノロジーに繋ぐ部分はFAと連携できるよう別途設けております。本稿では暗黙知の形式知化(基礎編)について一部をご紹介させていただきました。

ファンクショナル・アプローチ基礎/応用/実践

図5: ファンクショナル・アプローチ基礎/応用/実践

まとめ

今回ご紹介した暗黙知の形式知化(基礎編)は製造業界、自動車業界、道路業界、プラント業界、建設業界、IT業界、ゲーム業界ほかたくさんの実績がございます。各企業様のお悩みも様々であり難儀な問題に対してもお客様と一体となり技術技能伝承の涵養を図っております。このブログを読んでいただいている皆さまがもしご興味を持っていただけましたら弊社までご連絡いただけますと幸いです。

まずはノウハウを引き出そう!

図6:まずはノウハウを引き出そう!

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