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INCOSE 34th Annual International Symposium 参加報告

はじめに

皆様はINCOSE(International Council on Systems Engineering)という組織を御存知でしょうか?

INCOSEはシステムズエンジニアリングに関する世界的な非営利組織です。このINCOSEの年に一度の大会(International Symposium:IS)がアイルランドの首都、ダブリンで7月2日から7月6日にかけて開催されました。(なんと今回で34回目!)。

電通総研もシルバースポンサーとして協賛しており、筆者も現地を訪問して参加してきましたので、その様子をお伝えしたいと思います。(筆者は過去にもINCOSE ISに参加しており、今回は2回目の参加となります。)

アイルランドの首都:ダブリン

INCOSE ISの概要

INCOSE ISはアイルランドの首都、ダブリンのThe Convention Centre Dublin(CCD)で開催されました。ダブリンまでは日本から乗り換え含めて約二十時間、CCDはダブリン空港からタクシーで30分程度の距離にあります。この時期のダブリンの気候は15℃程度で過ごしやすく、コートを着ている方もいらっしゃいました。また緯度が高いため夜は11時ごろまで明るく、時間を錯覚しそうになります。

INCOSE IS会場:The Convention Centre Dublin(左の建物)

今回のINCOSE ISの会場であるCCDは、首都ダブリンを流れるリフィー川沿いにあります。CCDの一階が展示スペースとして使用されて多くのブースが並び、二階から四階でセッションが開催されました。

7月2日から7月5日は主に一般セッション、7月6日はTutorialが開催されていました。セッションは並行して6セッションが開催され、4日間で相当数のセッションがありました。(筆者は日本からの参加者と手分けして聴講しました。)

今回のINCOSE ISへの参加者は1050人程で、一部のセッションはバーチャルプログラムによりオンラインで参加することもできました。また日本からも企業や大学、ベンダーなどから50名程度の方が参加されていました。International Symposiumというだけあって世界の様々な国から参加者が集まっており、どのセッションでも質疑応答が活発に行われていました。また7月2日の夜にはIce Breaker Receptionが、7月4日の夜にはOfficial Dinnerが参加者同士の交流を深める場として設けられていました。Official DinnerではRDS(Royal Dublin Society)が会場として使用され、貴重な体験をできました。

Official Dinner会場:Royal Dublin Society

INCOSE ISのトピック

さてここからは7月2日から7月5日のセッションの内容を報告したいと思います。

セッションの傾向として、防衛や航空宇宙関連の企業や研究機関からの発表が多かったと感じました。逆に自動車会社からの発表はさほど多くなく、特に欧米の自動車企業からの講演は少なかったと思います。また日本からも企業やベンダーの方から数件の発表がありました。

セッションの内容は様々です。自組織内でのMBSEの教育活動について述べた発表や、MBSEにおける新たな考え方について説明した発表、MBSEへ取り組む際の留意点についての発表など、非常に幅広く様々な題材で発表がなされていました。

個人的に興味深く感じたセッションのテーマについて二つほどご紹介します。

SE/MBSEと解析、PLMの連携

一つがSE/MBSEと、解析やPLMとの連携についてです。過去参加時と比較して、今回はこのような連携に関するセッションが増えたと感じました。こうしたセッションの多くではCATIA MagicなどのSysMLツールで要求分析やアーキテクチャ構築を行い、制御や1D CAEのツールと連携してパラメータスタディを実施し、さらにはPLMやHILSと連携しています。このような発表はこれまでは大手ベンダーからの発表が中心でしたが、今回は企業からの発表もあり、実務適用の段階に近づいてきている、あるいは既に実務に適用されていると実感しました。

AIのSE/MBSEへの適用

もう一つがAIのSE/MBSEへの適用についてです。ChatGPTの登場に伴い、これまでは見られなかったAIのMBSEの適用に関するセッションもいくつか見られました。ある一つのセッションではChatGPT-4oでCATIA Magicのダイアグラムを自動生成する方法について説明されていました。この発表では聴講者の要望に応えて専用のGUIにプロンプトを入力してダイアグラムを自動作成するデモを交えて講演されており、多くの聴講者の注目を集めていました。このようなAIのSE/MBSEへの適用はまだ始まったばかりですが、今後も確実に適用は進むと予想されます。

他にも様々な企業や研究機関が自組織内でのMBSEの啓蒙や教育、知見伝承に関して発表を行っており、多くの組織でSE/MBSEの展開が始まっている、あるいは既に現場適用が始まっていると感じました。

INCOSE ISの展示会場

また展示会では国際的なベンダーが大きなブースを構える一方で表示ツールやコンサルティング支援を提供するベンダーのブースも多くあり、以前参加した時よりもMBSEとしての裾野が広がってきていると感じました。

シルバースポンサーとして参加した弊社電通総研は、二十分ほどのスポンサーセッションで「User-centric Systems Engineering with iQUAVIS(資料へのリンク)」というタイトルでiQUAVISについて紹介しています。日本発のツールということでご期待の声もいただきました。iQUAVISは今後も積極的に海外への展開を進めていく予定です。

まとめ

いかがでしょう? INCOSE ISの雰囲気が少しでも伝わりましたら幸いです。

INCOSE ISは様々な国のSE/MBSEに関連する企業・団体が一堂に会する場所です。セッションを聴講してSE/MBSEに関する様々な情報を収集するだけでなく、展示会場のブースを回って様々なソリューションの知見を得たり、SE/MBSEに関する同じような悩みを持った方々と意見交換をしたりすることも比較的簡単にできます。そしてなにより参加者の多くの方々が非常に気さくでフレンドリーであり、親交を深めやすいです。この点は前回参加した際も感じたことですが今回も変わらないと感じました。

さて次回のINCOSE ISはカナダのオタワで来年の7月26日から7月31日にかけて開催されます。SE/MBSEに関しての知見を深めたい、悩みがある、仲間を作りたい、と思っていらっしゃる方は、参加を検討されてみてはいかがでしょうか?


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