一年ほど前、システムズエンジニアリングの標準言語であるSysMLの新しいバージョン、SysMLv2の仕様検討の状況と、欧州での動向について、欧州に本拠を置く電通総研グループの一社、Two Pillars社(https://www.two-pillars.de/)の調査結果を引用する形でご報告しました。(SysML v2とは?欧州動向の現地調査レポートを基に解説)今回はその続編として、Two Pillars社およびFraunhofer IEMが、欧州企業に対してMBSE(Model Based Systems Engineering)およびSysMLの動向と展望に関してヒアリングを行った結果について、ご報告します。
本調査を実施した電通総研グループの欧州拠点であるTwo Pillars社は、電通総研の製品であるiQUAVISの欧州販売拠点であるとともに、欧州におけるMBSE・SysMLの動向調査や、研究開発業務も行っています。お客様からの欧州動向の調査依頼も受け付けておりますので、興味のある方は弊社担当までご連絡ください。
Fraunhofer研究機構(独: Fraunhofer-Gesellschaft)は、ドイツ全土に75の研究所・研究ユニットを持つ欧州最大の応用研究機関です。Two Pillars社は、Fraunhofer研究機構と電通総研の前身である電通国際情報サービスおよびITIDによって、MBSE分野で事業展開を行う合弁会社として2018年に設立されました。
本調査では欧州企業十八社のマネージャークラスに対して39の質問を行いました。ヒアリング対象の企業は自動車OEM、サプライヤ、電気電子、医療など多岐にわたります。本ブログでは字数の関係上、回答結果から一部を抜粋する形でご報告します。より詳細な記事を希望される場合は、ブログ下のリンクより必要情報を入力の上、ダウンロードお願いします。
質問は大きく以下の4つに分類されます。
ここからは上記の1~4の分類に沿って質問と回答を紹介します。項目4の質問と回答につきましては、ダウンロード版の詳細記事にのみ記載しております。
最初に回答者の所属組織の規模、自身のMBSE・SysMLに関する知見について質問してみました。
従業者数1万人以上の大企業に所属している回答者が8割を占め、MBSE・SysMLに関して平均以上の知見を持った回答者が大半です。SysMLv2についてもほとんどの回答者が知っており、半数がその内容についてフォローしていると回答しています。このことから今回の調査回答者はSysMLv2についてよく知っており、その内容についても理解していることがわかります。
まずMBSEについて以下の質問をしてみました。「将来の開発と協業において、MBSEはどの程度の重要性を持つと思いますか?」
この質問について、全ての企業がMediumからVery Highの回答を示しています。このことからMBSEが将来の開発にはなくてはならないものになるという認識を持っていることがわかります。回答者からは以下のような発言がありました。
今後の製品の複雑化に対応するためにMBSEは必要不可欠であるという認識が共通しています。その一方で、まだ成熟までは時間がかかる、という意見もあります。
次にSysMLについての質問です。「将来の開発と協業において、SysMLはどの程度の重要性を持つと思いますか?」
この質問については、Mediumとの回答が多く、一部には否定的な意見もあります。この質問に関しては以下のような意見がありました。
SysMLは市場のリーダーになる可能性を持っているという意見がある一方で、SysMLは単一の解ではない、自動車業界ではいまだにMBSEへ適用するアプリケーションへの共通理解や標準が定まっていない、という意見もあり、SysMLの浸透にもまだ時間がかかるという認識で共通しています。
ここまでの欧州におけるMBSE・SysMLの調査結果から、今後も複雑性を増していく製品開発や製品ライフサイクル管理の場において、MBSEが不可欠な要素であることは間違いありません。一方で業界を通じてMBSEやSysMLの重要性が理解され、標準が導入される状況までは至っていないとも言えます。
皆さんはこれらの調査結果について、どのような感想を持たれましたか?欧州ではMBSEが広く行きわたり、SysMLも幅広く使用されていて、ツールもモデルも成熟しているという認識でしたが、必ずしもそうではなく、日本と同様に、苦労している企業も多く存在するようです。
最初の質問です。「あなたの所属組織にMBSEの戦略はありますか?」
この質問については約7割の回答者が"YES"と回答しています。また所属組織のMBSE戦略について以下のようなコメントがありました。
アーキテクチャの定義や機能の分析を重視しているという傾向は、日本企業と通じるところがあります。
次に、以前のブログでも取り上げました、SysMLv2についての戦略や、移行計画について聞いてみました。
SysML V2についての戦略がある、移行を計画している、戦略はないが移行を計画中である、という回答が約6割を占めています。SysMLへの関心を示す企業、V2への移行を計画している企業、ともに日本に比較して多いのではないでしょうか。以下のような意見もありました。
SysML v2への期待が高い一方で、支援するツールへの期待も非常に高くなっていることが回答からも読み取れます。
さて本ブログでの紹介は以上となります。先述の通り項目4「SysMLの将来動向について」の質問と回答につきましては、ダウンロード版の詳細記事にのみ記載しております。より詳細な記事をご希望の方は以下のサイトより必要情報を入力の上、ダウンロードお願いします。ご参考までに、詳細記事には欧州企業への以下の質問とその回答が記されています。
興味を持たれた方はぜひダウンロードください。
再度のご紹介になりますが、本調査を行いました電通総研グループの欧州拠点であるTwo Pillars社は、弊社製品であるiQUAVISの欧州市場への提供とともに、欧州におけるMBSE・SysMLの動向調査や、研究開発業務も行っております。日本企業からの様々な御依頼も歓迎しておりますので、ご興味のある方はぜひ弊社担当までご連絡ください。
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