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HEEDSとCAEによる最適設計が実現する新しい開発プロセス

製品設計におけるCAE活用の現実的な課題

近年、製品開発の現場では、より高性能で高品質な製品を、より短期間で市場に投入することが求められています。そのため、CAE(Computer Aided Engineering)を活用したシミュレーション主導の設計プロセスが急速に普及しています。しかし、CAEを導入したものの、思うような効果を得られず、次のような課題に直面している企業も少なくありません。

  • 設計パラメータの最適化に膨大な時間がかかる
  • 最適設計のプロセスが属人的で、最適解にたどり着けない
  • 複数の設計案を比較検討する余裕がない
  • CAEツールの操作やワークフローが複雑で、専門家に依存しがち
  • 設計変更や新たな要求への迅速な対応が難しい

CAE活用の壁を乗り越えるために必要なこと

CAEの真価を発揮するためには、単にシミュレーションを実施するだけでなく、「最適設計を効率的に実現し、最適な設計案を短期間で導き出す」ことが不可欠です。しかし、従来の手法では、設計パラメータの組み合わせが膨大になり、すべてを網羅的に検討することは現実的ではありません。
また、設計者の経験や勘に頼ったパラメータ調整では、真の最適解にたどり着けないリスクもあります。さらに、設計変更や新たな要求が発生した際には、再度一から検討し直す必要があり、開発スピードが大きく損なわれてしまいます。

HEEDSがもたらす導入効果──設計現場の課題をどう解決するか

こうした課題を解決するために、多くの先進企業が注目しているのが、Siemensの設計空間探査ソリューション「HEEDS(ヒーズ)」です。HEEDSは、CAEの活用を次のレベルへと引き上げ、設計現場に以下のような導入効果をもたらします。

  1. 最適設計による最適解の発見
    HEEDSを導入することで、従来は検討しきれなかった膨大な設計パラメータの組み合わせを、効率的かつ自動的に最適化できるようになります。これにより、設計者の経験や勘に頼ることなく、真に最適な設計案を短期間で導き出すことが可能となります。
  2. 開発リードタイムの大幅短縮
    最適化作業を自動化することで、従来は数週間から数か月かかっていた作業を、数日~数時間単位に短縮できます。これにより、開発リードタイムを大幅に短縮し、製品の市場投入スピードを加速させることができます。
  3. 設計品質・性能の向上
    HEEDSの導入により、従来は見落とされがちだった設計案や、思いもよらないパラメータの組み合わせを発見できるため、製品性能や品質の向上につながります。これにより、競争力のある製品開発が実現します。
  4. 設計変更や新たな要求への柔軟な対応
    設計要件の変更や新たな要求が発生した場合でも、HEEDSを活用すれば、迅速に最適設計を再実施し、最適な設計案を導き出すことができます。これにより、開発現場の柔軟性が飛躍的に向上します。
  5. CAE活用の属人化からの脱却
    HEEDSは、最適化のプロセスを自動化するため、特定の専門家に依存することなく、組織全体でCAEの効果を最大限に引き出すことができます。これにより、CAE活用の属人化を解消し、組織全体の設計力を底上げします。

HEEDS導入事例:世界の先進企業が実感した変革

HEEDSは、すでに世界中の多くの企業で導入され、設計現場の課題解決に大きく貢献しています。

事例1 車両の設計・製造エンジニアリング企業におけるHEEDSの活用事例

レーシングカーや軍用車両の設計・製造を手掛ける国際的なエンジニアリング企業は、複数の最適化ツールを評価した結果、HEEDSとその独自のSHERPAアルゴリズムが、複雑かつ制約の多い設計課題に最も適していると判断しました。特に、最大50もの制約条件を持つ過剰制約問題に対し、HEEDSとAdams/Carの統合が有効であることを確認しています。従来は4~12人週かかっていた最適化作業が、HEEDSと並列処理の導入により1~2週間に短縮され、設計効率が大幅に向上しました。
具体的な事例として、軍用車両のスプリングやダンパー設定の最適化では、車両重量や総重量など異なる荷重条件下で、乗り心地や操縦性など多くの厳しい要件を同時に満たす必要がありました。従来の手動作業では解決できなかったこの課題に対し、Adams/Carでパラメータ化したモデルを用い、HEEDSと連携して200回の評価を実施。その結果、123回目で全ての制約を満たす最適解を発見しました。
最適化の成果として、横加速度は0.60Gから0.70Gへ向上し、ロール勾配やヨーレートのオーバーシュートも大幅に改善されました。これにより、軍の要求する乗り心地や操縦性基準をクリアしつつ、さらなる性能向上を実現しています。顧客は、HEEDSとAdamsの組み合わせが過剰制約システムでも効果的に機能し、設計品質と効率の両面で大きな成果を上げていると評価しています。

事例2 産業機械メーカーにおける製品設計の最適化

ある産業機械メーカーは、業界で高品質と信頼性で知られるブランドのハンドトラックを製造しています。これらの製品の軽量化を目指し、複数製品で使用されるダイカスト製ホイールブラケットの最適化に取り組みました。既存設計はすでに高度に最適化されていたため、従来の手法では十分な軽量化が困難でした。また、アルミニウムとマグネシウムの両方の材質に対応し、様々な使用状況や荷重条件を考慮する必要がありました。最適化では48通りの荷重ケースから重要な5ケースを選定し、Abaqus Standardを用いて各設計案を解析。HEEDSによる非パラメトリック形状最適化を実施し、応力や変位の目標を満たしつつ、不要な部分の体積を削減しました。製造性確保のため、ノード移動には制約を設け、ダイカストの抜き方向やベアリング取付部などの形状維持も考慮しました。HEEDSは20回の設計評価で、質量14.5%削減の実現可能な設計を発見。最終的なCADモデルでは、質量14.2%減、重要荷重ケースで最大20%の応力低減を達成し、耐久性と性能も維持されました。

事例3 HEEDSとAmesimによる油圧システムの最適化

油圧ショベルなどの重機では、燃料消費と排出ガス削減が重要な課題です。そのため、各サブシステムの性能を考慮しつつ、ハイブリッド化による性能向上が求められています。SiemensのSimcenter Amesimは、エンジンや油圧ポンプなどの主要サブシステムを多階層でモデリングし、デジタルツインを活用した性能評価・最適化を可能にします。さらにHEEDSは、最適設計を自動化し、計算資源の最大活用や効率的なパラメータ最適化、設計案の性能評価を支援します。今回、電動スワールモーターを搭載したショベルの最適設計をHEEDSで実施し、Simcenter Amesimで構築した車両モデルを用いて、モーターのトルクやギア比、ウルトラキャパシタ容量、制御方式など500通りの設計案を自動評価しました。その結果、サイクルタイムを1%、燃料消費を3%改善する最適設計を発見し、性能指標間の関係性も明らかになりました。Simcenter AmesimとHEEDSの連携により、入力パラメータの自動設定や出力抽出、並列シミュレーションが容易となり、設計効率と洞察が大幅に向上しました。

最適設計による製品開発の革新──HEEDSがもたらす新たなスタンダード

HEEDSによる最適設計は、従来の属人的かつ時間のかかる設計プロセスを大きく変革し、短期間で高品質な最適設計を実現します。これにより、開発リードタイムの短縮や製品性能の向上、設計変更への柔軟な対応が可能となり、企業の競争力強化に直結します。今後も最適設計の重要性はますます高まる中、HEEDSの活用は製品開発の新たなスタンダードとなるでしょう。

さわって実感!設計空間探査HEEDS オンライン 操作体験セミナー」開催のお知らせ

このように、HEEDSは設計現場のさまざまな課題を解決し、製品開発の競争力を飛躍的に高めるソリューションです。しかし、実際にどのように活用できるのか、どれほどの効果があるのかは、実際に「体験」してみなければ実感しにくいものです。

そこで、電通総研では、HEEDSの操作性や導入効果を実際に体験できる「さわって実感!設計空間探査HEEDS オンライン 操作体験セミナー」を開催いたします。

また、操作体験セミナーにご参加頂いたお客様にHEEDSの無償トライアルも用意しております。トライアルにより、操作体験とともに貴社の製品開発プロセスにおける効果をご実感頂けます。

開催日時やプログラムの詳細、お申込み方法については、下記のページをご覧ください。


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