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SysML v2とは?欧州動向の現地調査レポートを基に解説

欧州発、SysML v2最新動向

システムズエンジニアリングの標準言語であるSysMLの新しいバージョン、SysML v2のリリースが予定されています。「SysML v2からSysMLの仕様が大きく変わる」と言われていますが、具体的にどのように変わるのか?その仕様検討の状況と、欧州での動向について、欧州に本拠を置くISID Gr、Two Pillars社(https://www.two-pillars.de/)に調査を依頼しました。今回のブログでは、Two Pillars社からのレポートを引用しながら、SysML v2の状況について御報告します。

システムズエンジニアリングのためのモデリング言語「SysML」とは

SysML v2について紹介する前に、まずSysMLそのものについて簡単にご紹介します。SysMLとはSystems Modeling Languageを指し、OMG(Object Management Group)によって策定されたシステムレベルの設計のための標準言語です。

UMLとSysMLの関係性

SysMLはソフトウェア開発のためのモデリング言語UML(Unified Modeling Language)をベースとしており、SysMLを使うことで各種システムや「システムのシステム(System of Systems)」の仕様記述、分析、設計、検証、評価などにシステムズエンジニアリングの手法とともに使うことでシステム開発の効率化が期待できます。弊社で扱っているダッソー・システムズ社製ツール、CATIA Magicをはじめ、様々なツールがSysMLに対応しています。

SysML v2の開発の背景

さてSysML v2はなぜSysML v1から仕様が大きく変わるのでしょうか?SysML v2の検討が始まった背景について、レポートには以下のように記載されています。

"While UML was established as an independent technical language, SysML is about supplementing the individual disciplines involved in a project. Nevertheless, the origin from software technology is obvious and hinders the successful roll-out for daily application. Due to this, the update of the SysML methodology toward as SysML v2 started some years ago."

SysMLはプロジェクトに関係する様々な分野の情報を補完するためのものですが、UMLをベースとしているためソフトウェア技術の側面が強く、日常的に使う言語として展開できない。そこで数年前からSysML v2の検討が始まった、と記されています。また以下のような記述もあります。

"Despite today's high interest in the SysML, its usage in industry is quite poorly in general. As a common understanding, the MBSE approach consists out of three elements: A modeling language, a modelling method and modelling tool. The SysML as a profile of the UML is clearly communicated as language to support modelling - at least the missing methodological support in SysML is one of possible reasons for the underperforming adoption."

SysMLへの関心は高いですが、産業界では一般的にまだあまり使用されていないようです。MBSEアプローチは、モデリング言語、モデリング方法、モデリングツールの3つの要素で構成されているが、SysMLに方法論的な支援が欠如していることは、SysMLの採用が広まらない状況を生み出す理由の1つである、と結論付けられています。またレポートには、主にUMLをベースとしていることによる制限によって、エンジニアリングの観点で必要となる以下の機能の強化を実現することができなかった、との記載もあります。

  • Improved integration with analysis(分析を用いた統合の改善)
  • Geometric view(空間範囲を持つアイテムの観点)
  • Trade studies(トレードオフの分析)
  • Variant modelling & Design configurations(バリアントを使用した構成の設計)
  • Improved integration between behavior and structure(振る舞いと構造の統合の改善)
  • Property-based requirements(テキストベースではなくプロパティベースの要求)

SysML v2の開発スケジュールと体制

このような背景から、UMLの制約から逃れ、よりシステムの記述に適した言語であるSysML v2の開発が始まりました。SysML v2の検討は以下のスケジュールで進んでいます。

SysMLイニシアチブは、システムズエンジニアリングでの適用のためにUMLをカスタマイズするというINCOSEワーキンググループの決定によって2001年に始まりました。それ以来、常にさまざまな分野のさまざまなエンジニアリング専門家の自主的な作業に基づいて活動は行われています。 SysML v2に向けて、200 人以上のメンバーによる強力な支援について言及されています。 以下の図は、SysML v2イニシアチブに参加した85の組織の割合を表したものです。

エンドユーザーが約26%、ツールベンダーとコンサルティング企業が約40%の割合を占めており、ツールベンダーとコンサルティング企業の占める割合が高いことがわかるかと思います。

SysML v2のキーファクター

SysML v2がSysML v1の課題を克服し、システムズエンジニアリングの概念を実現するためには、以下の要素が不可欠とレポートでは語られています。

  1. New Metamodel - the so called KerML (= Kernel Modeling Language) is the new metamodel of SysML v2. While SysML v1 is based on UML, SysML v2 gets an own metamodel.
  2. Robust visualizations - not only like a few diagrams shall enable the modeling. Robust visualizations are possible based on a formal language description that is based on a textual syntax.
  3. Standardized API to access model: Independent of technology used, external application can access model in standard way through API (rest) by multiple technologies, just need to be conform to API definition - based on KerML

要約すると以下の通りです。

  1. 新しいメタモデル: SysML v1 は UML に基づいていますが、SysML v2 は独自のメタモデル(KerML)を持ちます。
  2. ロバストな視覚化:テキスト構文に基づく正確な言語表現に基づき、ロバストな視覚化が可能となります。
  3. モデルにアクセスするための標準化されたAPI:外部アプリケーションからAPI(rest)を介した標準的な方法で、モデルにアクセスできるようになります。(KerMLに基づいたAPI定義に準拠する必要があります。)

以下、この三点についてご紹介します。

1. 新しいメタモデルとは

SysMLをよりシステムズエンジニアリングに向いた言語とするためには、UMLの制約から脱する必要があります。そのための新しい、SysML v2のメタモデルがKerMLです。

"The KerML provides an application-independent syntax and semantics for creating more specific modeling languages."

レポートには「KerMLは、より具体的なモデリング言語を作成するための、アプリケーションに依存しない構文とセマンティクスを提供する」と記載されています。詳細は割愛しますが、ソフトウェア寄りのUMLからKerMLへとメタモデルを変更することで、さらにシステムズエンジニアリングに適した表現ができるようになります。

SysMLとKerMLの関係性

2. ロバストな視覚化とは

"SysML v1 only allows to model in visual diagrams based on the UML. Due to certain tool capabilities, it is also possible to derive tables from the data base - but these concepts were not part of the SysML v1 - whereas from v2 on the concept is part of the specification for graphical modelling, tabular modelling and textual specification (formal)."

レポートに記載されている通り、SysML v1ではUMLに基づいて、BDDやIBD等のダイアグラムしかモデル化することが出来ませんでした。使用するモデリングツールによっては、作成したモデルからテーブルを導出することもできますが、SysML v1の仕様には表はサポートされていないため、ツールごとに作成できる表やマトリクスは異なります。しかしSysML v2ではグラフ、表といった表現は仕様の一部となるため、SysMLの図表はツール等の環境によって左右されず、標準化されると予想されます。

また、グラフィカルなモデリング、表形式のモデリングの他に、テキスト形式でモデルの表現もSysML v2の仕様の一部となっております。テキスト形式でのモデルの表現はシミュレーションなどの場合に、グラフィカルなモデルよりも正確に作成、レビューできることがあります。また、グラフィカルモデリングからテキスト形式へ変換することによって、形式的なモデル転送が可能となります。

(従来表現(左図)に加え、テキストベースでモデリングする方法(右図)も仕様として定められている)

テキスト形式モデリングの例(SysMLv2 Submission Team資料より抜粋)

レポートに記載されているように、SysML v1 ではUML に基づくダイアグラムでしかモデル化はできませんでした。データベースから表を導出することもできますが、これはツール機能によるもので、SysML v1の仕様に基づいたものではありませんでした。しかしv2からグラフや表、といった表現はSysML v2の仕様の一部となります。このことにより、SysMLの図表での表現はツールに依存せず標準化されると予想されます。

3. モデルにアクセスするための標準化されたAPIとは

"The API includes services to operate on SysML v2 models and to connect SysML v2 models with models in other disciplines. "

SysML v2のAPI には、SysML v2 モデル上で動作し、SysML v2 モデルを他の分野のモデルと接続するためのサービスが含まれていると記載されています。このAPIを使用することで、これまで以上にSysMLモデルを他のシステムと繋ぐことが容易になると予想されます。しかし、APIが完全には完成しないことが予想される、指定されているサービスは非常に抽象的である、といった懸念点も示されており、実装や運用には注意が必要です。

最後に

以上をまとめますと、SysMLv2では、以下が可能となると言われています。

  • UMLに代わる独自のメタモデルKerMLの採用により、さらにシステムズエンジニアリングに適した表現ができるようになる。
  • 図表での表現が仕様の一部となり、ツールに依存しないロバストな表現が可能となる。
  • APIの仕様が標準化され、外部システムとの連携が容易になる。

今後もSysML v2については調査を継続する予定です。新規情報が入りましたらまた掲載しますので、ご期待ください。

最後になりますが、ISIDではSysMLに準拠したツール、CATIA Magicの取り扱っており、ISID製のツール、iQUAVISとの連携も進めています。またiQUAVISのSysML v2対応も進めており、SysMLの進化に合わせて最適なシステムズエンジニアリング開発環境を皆様に提供する準備を進めています。

Two Pillars社との協調も加速しており、今後もSysMLに限らず欧州の様々な最新トピックを提供していきます。欧州動向に関する調査依頼も受け付けておりますので、ご興味のある方はご連絡ください。

Two Pillars社について

今回の調査を担当したTwo Pillars社は欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構(所在地:ドイツ・ミュンヘン)と、MBSE分野で事業展開を行う合弁会社として2018年に設立されました。欧州の製造業を対象として、ISIDグループの構想設計支援システム「iQUAVIS(アイクアビス)」をベースとした先進的なMBSEプロセス支援機能を提供しています。

フラウンホーファーIEMのオフィス(C)Fraunhofer IEM

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