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設計者CAEが業務を圧迫する要因とは?余裕を生む活用方法を解説

はじめに

「フロントローディング」は長年の製造業での課題で、課題解決のツールとしてCAE(Computer Aided Engineering)の導入・活用が各企業で進められてきました。
近年では「設計者CAE」も一般的なものとなりましたが、多忙な設計者に解析業務が加わることで、より忙しい状況に陥っていると感じています。

設計者は解析専任者と比較して、CAEの使用頻度も低いため、操作やノウハウの観点から使いこなすことが難しく、解析業務が設計者の定常業務を圧迫しているのではないでしょうか?
本テーマでは「設計者CAE」によるゆとりをもった開発プロセスを実現するまでの流れをお伝えします。

ISIDの考える設計者CAE

ISIDでは下図のようにCAEの活用シーンを3つに分類しています。中央に位置する「設計者CAE」は構想設計と詳細設計の間での利用を想定しており、設計者の発想支援を目的にしています。
ここからは「設計者CAE」に関連する課題とソリューションについて言及します。

「設計者CAE」は

  • 設計者自身がCAEを用いて複数の設計案を検証すること
  • 検証結果を用いて、設計課題に対する設計者自身の仮説を立証すること

を目的に利用し、「根拠のある設計」を実現させるツールであると考えています。

「根拠のある設計」は

  • 後工程のトラブル対応の防止
  • 開発スピードの向上
  • 開発期間の短縮

に繋がるため、設計者の業務負担が軽くなるよう「設計者CAE」を有効活用してほしいと考えていますが、「設計者CAE」を有効活用するまでに下図のように課題が多く存在するのが実情です。

次章以降ではこれらの課題を3つの切り口で整理し、それぞれに対応した解決策をご案内します。

設計者CAEを有効活用するまでの課題と解決方法

「設計者CAE」を有効活用するために解決すべき課題は大きく分けて①②③の3つあると考えています。

①ツールに関する課題

ツールを切り口に「設計者CAE」が定着しない原因を考えると、操作の煩わしさと解析精度不足の2点が考えられます。

慣れない操作の下で時間をかけ、ようやく得られた解析結果が設計に反映できない精度だと「もう解析なんてしたくない。。。」と思うのではないでしょうか?
一方で、解析精度を気にすると底なし沼に足を踏み入れることになり、抜け出すには時間と気力が必要です。筆者は「設計者CAE」の活用シーンである開発プロセスの上流では、容易な操作で、右か左かの方向性の判断ができれば十分と考えています。

以上のことからツールに関して、解析以外にも多くの業務を抱える多忙な設計者に、「設計者CAE」による事前検証を定着させるための課題には、以下が挙げられます。

  • 操作が容易で素早く計算結果が取得できること
  • 相対比較が可能な精度が担保されており、結果が人に依存しないこと

②組織・環境に関する課題

「設計者CAE」をストレス無く活用するには組織・環境作りも重要になります。

組織作りでは、解析の領域や難易度に応じて、誰が解析業務を担うかの役割を明確にすることが重要です。

  • どの領域までは「設計者CAE」で検証するかの線引き
  • 高難易度の解析に従事する専任部隊の整備
  • 設計者が解析に手詰まりが生じた際のよろず相談場所の整備

を行うことで、設計者が解析業務を行う際の大部分の心配事を排除することができます。このような組織作りによって、CAEを有効活用する体制が整備され、その結果解析主導の設計の実現に近づくことができます。

環境作りでは、CAEを利用する際に設計者が思い悩む要因を、可能な限り取り除くことが重要です。

  • 過去の解析結果が閲覧できるデータベースの構築
  • べからず集などのノウハウの整理
  • 「設計者CAE」を操作しやすいようにカスタマイズ

など、利用環境の整備も「設計者CAE」の活用を後押しできます。

③人財に関する課題

「若手とベテランで検証結果に差が出てしまうことに悩んでいる。」と相談いただくことがあります。その差はどこで生じているのでしょうか?ソフトウェアの操作習得のために例題モデルを使ってチュートリアルを実施した場合、若手とベテランとで取得する結果にほとんど差は生じません。それなのに実モデルで解析結果に差が生まれるのは、実モデルを扱う際に、作業者自身の「判断」の要素が混入するためです。この判断は工学知識や経験の影響を受けます。解析結果の差を減らすには

  • 「判断」に影響する知識を標準化する
  • 「判断」の場面をなるべく減らす

必要があります。これらの課題の解決策は①で言及したツールに関する課題に加え

  • 工学知識/CAEに関する教育環境の整備
  • 解析の手順書の整備

が重要となります。

ISIDが提供するCAEの課題を解決するソリューション

ISIDでは前項で挙げた各課題に対応するソリューションを提供しています。

①ツールの課題

ISIDはマルチベンダーとして、お客様の業務環境に合わせたCAEツールの導入・活用サポートを行っています。

  • 手軽な操作で解析結果も人に依存しないメッシュレスの設計者CAEツール(SimSolid)
  • 開発の上流で新たなデザイン案を導出する構造最適化ツール(Inspire)
  • 事前に射出成形や鋳造、プレス成型の様子をシミュレーションするツール(Inspire Manufacturing)
  • お使いのCAD環境でCAEが利用できるCAD組み込み型のCAEツール

など多種多様なソフトウェアを使って皆様の課題を解決します。
導入時の操作トレーニングやストレスなく利用するためのカスタマイズなど環境整備までサポートさせていただきます。

②組織・環境の課題

ISIDでは組織としてCAEを有効活用できている理想の姿の設定から、理想の姿に至るまでの計画、技術構築、人財育成、インフラ整備、運用支援まで一気通貫のサポートを実施しています。

「設計者CAE」の有効活用の土台作りだけでなく、データを蓄積するための環境構築や、蓄積したデータを用いたAI活用など「設計者CAE」の有効活用の先を見据えたご支援も行っています。

③人財の課題

ISIDでは解析プロセス標準化のための手順書作成やルール決めのサポートから、目的や現状の技術レベルに合わせた教育を実施しています。教育内容は各企業の開発製品や領域に合わせてカスタムするなども可能です。

解決事例

①設計者CAEツール導入事例:SimSolidの導入

背景:
FEMの操作が複雑で結果取得まで長時間を要している
大規模アセンブリモデルや複雑な形状について、メッシュ作成が困難
目的:
手軽な操作で大規模アセンブリモデルや複雑なモデルの解析を実施すること
成果:
メッシュレスで解析できるツールの導入により大幅な工数削減、大規模アセンブリや複雑形状の解析を実現

②環境づくりの事例:CAE作業の自動化・データベース化

背景:
解析モデル構築の際の人為的なミスが多発し、結果も利活用できていなかった
目的:
設計者が効率的にCAEを利用し、解析結果を利用、参照できる環境を構築すること
成果:
煩雑な操作を可能な限り簡易化し、ケアレスミスの最小化を達成
解析を自動実行する仕組みを構築し、24時間フル稼働で複数の計算を実施

③教育の事例

背景:
社内にCAEのノウハウが無く、妥当なモデル化方法が分からない
CAEを利用したいタイミングは忙しく、操作も複雑なため利用しないことが多い
目的:
CAEを活用するうえで最低限の知識を持ち、結果を正しく判断できること
成果:
CAEスキルの向上、利用頻度向上によるライセンスの有効活用

まとめ

CAEを活用したフロントローディングの考えは長年提唱されていますが、フロントローディングの目標に対し有効活用ができていないケースが多くあると感じています。ツール導入による解析業務の増加が設計業務を圧迫し、CAEが足枷になってしまっているのではないでしょうか。ISIDでは長年のご支援の経験から多種多様なお悩み事に適したソリューションを取り揃えています。今回紹介した課題に対応したソリューションの中で、興味を惹くものがあればお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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