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MBE成熟度分析キャンペーン第1期実施報告
〜製造業28社の3DAモデル活用によるDX状況公開!〜

1.第1期「MBE成熟度分析キャンペーン」に製造業28社参加!

ものづくり情報が定義された3Dモデル(3DAモデル)を社内外で流通・活用し、大きな成果を狙うコンセプトである「MBE(Model Based Enterprise)」。

そして、そのコンセプト実現への第一歩として「MBE成熟度分析キャンペーン」をスタートさせた旨は本ブログでも既にご紹介しました。

MBE成熟度分析キャンペーンについては、2023年3月末で第1期を終了し、製造業様28社31事業部門よりご参加いただきました!本ブログでは、その結果につき詳細にご報告します。

2.MBE成熟度分析キャンペーンとは

  • "NSE MBE Maturity Index"をベースにしたアンケートに回答頂くことで、ものづくりプロセスの5つのカテゴリにおけるMBEの取組/取組準備状態を可視化します
  • 貴社の今後のMBE推進のための活動方針について、ISIDの考察を報告させて頂きます

アンケート

アンケートのフィードバック

ご回答頂いた方に、下記内容のレポートを後日報告させて頂きます

  • 貴社の現状成熟度(レーダーチャート、マトリクス) ※ご回答後すぐに確認頂けます
  • 全体平均との比較
  • ISIDからの考察(MBE成熟度を向上させる上での効率の良い進め方、等)

3.MBE成熟度分析キャンペーン 第1期実施概要

2022年12月から2023年3月にて実施しました、本キャンペーン第1期に関する内容を報告いたします。
参画企業数28社、同一法人でも全く異なる事業を行っている事業部門からの複数参画もあり、参画事業部門数としてカウントしますと31となります。業種としては御覧の通りバラエティに富んでいます。企業規模では従業員数2001名以上の大企業が大部分を占めています。

実施期間:2022年12月~2023年3月

参画数:28社、31事業部門

参画企業 業種:

参画企業 企業規模:

4.目指すべきMBEの姿

MBE成熟度は米国のMBE展開の過程で指標化され、米国標準技術研究所でも採用される標準指標です。
レベル0から6の7段階でMBE推進状態の定義がされています。
レベル4以上が、「組織として部門横断のMBEチームが組成され、3DAモデルがモノづくりの正の情報としてPLMで管理され、製造・検査・受入業務にもフル活用されている」という状態と言え、MBEとしてまず目指すべきレベルとなります。

5.キャンペーン参画企業のMBE成熟度分析結果

設計、製品データ管理、製造、品質、企業活動の5カテゴリの全体感を示したのが以下の図です。

グレーのラインが実務適用中、いわゆる現状です。オレンジのラインが実務適用準備中、いわゆる現状実務適用していないが、業務プロセスや保有システムを踏まえるとここまでは到達できるポテンシャル、を表しています。現状を表すグレーのラインとしてはレベル12であり、3DAモデルの活用はこれから、と言えます。
製品設計では、3Dモデルも活用しつつ、正の成果物は2D図面となっているため、後工程のレベルも上がらない状態です。
製品データ管理はPLMシステム活用企業が多く、一番レベルが高くなっています。
製造領域の3D活用度も低いですが、製造指示に関しては3DViewingデータの活用が見受けられます。
品質検査領域レベルが一番低くなっています。裏を返せば伸びしろが大きいとも言え、この領域のデジタル化からスタートさせる企業が増えています。
C5
の企業活動は、MBEに関する組織ガバナンスや予算等のリソース手当を表します。MBEを組織的に推進している企業はまだ少ない結果となっています。

以下からは、この5カテゴリー毎の詳細を見ていきます。

製品設計領域

製品設計領域は、3Dモデルとの連携が無い2D図面が正のプロセスとなっています。
製品定義は、寸法・注記等を2D図面上に作成して実施しています。
モデル品質検証は製品実機でのチェックが主体です。
成果物としてのモデルの検証・認証に関して電子認証行為は行われますが、認証された事実は成果物とは無関係です。
メカCADと電気CADとの連携は希薄、解析には3Dモデルが活用されるため一番右の点数が高くなってはいますが、解析あるいは実験データの管理はドキュメント管理システムで保管されていることが多いです。
これが製品設計領域での実態です。

製品データ管理領域

製品データ管理領域は、PLMシステム導入が進んでおり一番スコアが高い領域となっています。
BOM管理はPLMで実施され、主要な製品属性がBOMと紐づけられています。
データ管理のポリシーは組織横断で統制されています。
製造工程等の情報は図面データからリンク参照等で対応されています。
共通デジタルライブラリはドキュメント管理システム等に保管されて活用されています。
データの記録・保管についてですが、長期保管対象はPDF図面とSTEPデータ等で保管されるケースが多いようです。

製造領域

製造領域は全体的にスコアは低いですが、製造オペレーションへの3Dビューイングデータ活用が進んできており、その部分だけ少しスコアが高く出ています。
製造工程情報の作成は2Dがベースで参考として3Dモデルが使われています。
工具設計には製品3Dモデル形状が利用されることが多いです。
作業指示書作成には2Dイラストと3Dモデルのキャプチャ画像が使われています。
CAMの利用は進んでいますが、そのデータ管理はまだまだ整っていません。
製造オペレーションでは設計3Dモデルのビューイングデータを参照しており、スコアが少し他より高くなっています。

品質検査領域

品質検査領域はスコアが一番低い領域となっています。
品質管理プロセスに関して、検査計画や治工具等は2D図面を主に参照に作成されています。
検査指示書は2Dイラストや3Dモデルのキャプチャ画像と文書にて作成され、製品3Dモデルとは関連付け無くファイル管理されています。
測定プログラムは製造プログラムと同様2D図面を主に参照して作成されています。
検査装置の設計には製品3Dモデルが活用されており、品質検査領域の中では若干ですがスコアが高くなっています。

企業活動

最後5つ目の企業活動領域になります。
一番左の業務コラボレーションは日本人得意技のすり合わせ型業務を反映しスコアが高く出ていますが、それ以外は極めて低くなっています。
特にMBE遂行のためのトレーニングやサポート体制はまだ皆無に等しく、MBE活動に関する予算も定常的に確保されていることはまだ無く、必要に応じて予算化を試みる、という状態です。
専門のMBE推進組織の組成にはまだ時間がかかりそうな状況を表していると読み取れます。

以上のように、今回のアンケートにて、参画企業全体として以下のような状態であることが分かりました。

  • 3DCADやPLMの普及は進んだものの、正の成果物は2D図面である
  • 製造・品質検査領域のデジタル化は遅れている
  • 整った体制でMBE推進をしている企業はほぼ無い

一方、この現状打破に動き始めている企業もかなり増えてきています。
次に、本キャンペーン結果を踏まえ、次の一歩を踏み出したお客様の事例をご紹介します。

6.分析結果を踏まえ、MBEへの第一歩を踏み出した例

例1:3DAモデルにフォーカスした取り組みからスタート

先程の結果の通り、製品設計での3DAモデル作成・活用の遅れが他領域にも影響をしていることから、MBEのコアとなる3DAモデルにフォーカスした取り組みから始めるケースです。
正しい幾何公差の理解からスタートし、それを3DAモデルに盛り込み、後工程での効果実証を行い、必要なシステムを整える、というステップとなります。

ステップ1では、お客様のメイン製品・部品の図面を題材に、幾何公差の観点から徹底的に赤入れをし、フィードバックします。
ステップ2では、ステップ1でのノウハウを、3DCADを活用して3DAモデルとして作成していきます。後工程で活用しやすく、規格上正しい、3DAモデル作成にはノウハウが必要となります。ステップ1を支援した幾何公差に精通したコンサルタントとCADに精通したエンジニアが連携し、3DAモデルを作成し、お客様にノウハウ共有をします。

ステップ3では、公差解析・測定・検査・加工、といった3DAモデル流通により効果が出やすい領域につき、ステップ2で作成した3DAモデルを活用することでの効果度合を検証し、お客様とのすり合わせにより、妥当性のブラッシュアップとプライオリティ検討等を進めます。
最後にステップ4としてステップ3での検討内容と、お客様の現状業務プロセス・システム環境を踏まえ、システム構築案を提示します。本POCにより、幾何公差の理解、正しい3DAモデルの作成、3DAモデル流通によるROI算出、といったMBE推進における主要ハードルを下げ、活動を加速することができます。

例2:品質検査領域への3DAモデル活用からスタート

品質検査領域でのスコアが一番低かった訳ですが、デジタル化の効果が見えやすいということも分かっており、この領域から3DAモデル活用をトライされるお客様もかなり増えています。帳票類作成に関連する測定番号付与、図面値の転記、結果取り組みといった業務、あるいは測定プログラム作成関連業務、で改善効果が高いことが分かっています。3DA情報を活用し、測定プログラム自動作成、自動附番、指示書作成効率化、測定機にあったCNCコード出力、設変対応、等の施策を進めています。

例3:MBE推進の意義に立ち返る

MBEへの第一歩例の最後です。成熟度分析キャンペーンで自社の状況の把握と他社比較はでき、どこから活動を進めるかの感触も掴めたが、あえてMBE推進の意義に立ち返るケースとなります。
キャンペーンでの分析結果も活用しながら、現場ヒアリングも行いより詳細な現状分析を行い、将来像を設定し、ギャップを埋める施策とそれによるROI算定をしっかり行います。
具体的施策活動に入るためには、MBE推進の意義につき活動メンバーが腹落ちし、組織・プロジェクトとしてのコンセンサスが得られていることが重要となります。

以上3つの例をご紹介しました。
例1,2は効果が出そうな領域でアジャイルに回してみて、効果を実感して活動推進を回していくスタンスです。
例3は全体感を持って進めながらコンセンサスを醸成させていくスタンスとなります。
このようにお客様にあったMBEへの第一歩ご支援メニューは色々取り揃えておりますので、是非ISIDにご相談いただければ幸いです。

7.まとめ

今回はMBE成熟度分析キャンペーン第1期のご報告をさせていただきました。

また、キャンペーン参加の前に、そもそもMBEとは、あるいはMBE成熟度分析キャンペーンとは、を説明して欲しい、といったご要望も大歓迎です!メールあるいはお問合せフォームリンクよりお気軽にその旨お知らせ下さい。

また、MBEコンセプトそのものやMBE成熟度分析キャンペーン内容に関するお問合せも大歓迎ですので、お気軽にお声がけ下さい。


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