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製造業の設計・開発を革新する「EngineeringAI」
~CAEとAIの融合によるサロゲートモデル活用最前線~

はじめに

製造業における設計・開発業務は、近年ますます高度化・複雑化しています。製品の高性能化や短納期化、コスト削減といった要求が高まる中、CAE(Computer Aided Engineering)を活用したシミュレーション解析は、ものづくりの現場において不可欠な存在となっています。しかし、CAE解析には膨大な計算リソースや専門知識が必要であり、設計サイクルの短縮や効率化を阻む要因となることも少なくありません。

こうした課題を解決する新たなアプローチとして、AI技術を活用した「サロゲートモデル(代理モデル)」の導入が注目されています。サロゲートモデルは、従来のCAE解析の精度を維持しつつ、計算時間を大幅に短縮できるため、設計・開発プロセスの革新をもたらす技術として期待されています。

電通総研は、50年にわたり製造業のお客様にCAEの導入・活用支援を提供してきました。近年では、AIトランスフォーメーションセンターと製造事業部門が連携し、サロゲートモデルの構築支援に注力しています。本ブログでは、電通総研が提供するAI技術活用ソリューション「EngineeringAI」の概要、製造業のお客様が抱える課題、サロゲートモデルの適用事例、そして10月と11月に開催予定の「EngineeringAI相談会 ~サロゲートモデル編~」についてご紹介します。

EngineeringAIとは──AI技術で設計・開発業務を変革

EngineeringAIのコンセプト

EngineeringAIは、電通総研が提供する、AI技術を活用した設計・開発業務支援ソリューション群の総称です。CAE解析の効率化や自動化、設計最適化、品質向上など、製造業のさまざまな課題解決を目的としています。特に、AIによるサロゲートモデルの構築・活用を中心に、最新のAI技術と長年のCAEノウハウを融合した独自のサービスを展開しています。

電通総研では、まずは社内の解析データなどを活用したサロゲートモデルの構築から始め、続いてAIによる形状の生成、最終的にはAIが設計者に設計案を提案する「Generative Design(ジェネレーティブデザイン)」を実現することを目指して取り組むことをお勧めしています。

Generative Designを中核に据えたエンジニアリング業務へのAI活用

EngineeringAIの主な特徴

  • CAEとAIの融合:従来のCAE解析にAI技術を組み合わせることで、解析業務の効率化と高精度化を実現
  • サロゲートモデルの構築支援:AIを活用した代理モデルにより、膨大な計算コストを削減し、設計サイクルを短縮
  • 豊富な導入実績とノウハウ:50年にわたるCAE支援の実績と、AIトランスフォーメーションセンターの知見を活かしたサポート体制
  • サロゲートモデルの構築からはじめ、形状生成AI、Generative Designの実現といったステップによるAIの導入・活用を豊富な実績によって伴走

Generative Designの実現に向けた取り組みについて説明した資料がダウンロード頂けます。

製造業が抱える設計・開発業務の課題

CAE解析の現状と課題

しかし、いずれはGenerative Designを目指すといっても依然として製造業における以下のようなAI活用のハードルは存在しており、簡単に進まないのが現実です。

1. 計算コスト・時間の増大

  • 高精度な解析を行うためには、膨大な計算リソースと時間が必要
  • パラメータスタディや最適化設計では、数百~数千回の解析が必要となり、設計サイクルが長期化

2. 専門知識の属人化

  • CAE解析には高度な専門知識が求められ、担当者のスキルに依存しやすい
  • 担当者の異動や退職によるノウハウの継承が課題

3. 設計変更への迅速な対応

  • 市場ニーズや顧客要求の変化に伴い、設計変更が頻繁に発生
  • そのたびに解析をやり直す必要があり、開発リードタイムが延びる

4. データ活用の難しさ

  • 解析データや実験データが十分に活用されていない
  • データの蓄積・管理・再利用が進まず、同じような解析を繰り返すケースも

サロゲートモデル導入による課題解決

これらの課題に対し、AI技術を活用したサロゲートモデルの導入は、以下のようなメリットをもたらします。

  • 解析時間の大幅短縮:従来のCAE解析に比べ、数十倍~数百倍の高速化が可能
  • 設計最適化の効率化:多変量最適化やパラメータスタディを短時間で実施可能
  • ノウハウの形式知化:AIモデルとして知見を蓄積・共有でき、属人化を防止
  • 設計変更への柔軟な対応:設計パラメータの変更に即座に対応し、迅速な意思決定を支援

従来のシミュレーションとサロゲートモデルの違い

サロゲートモデルの適用事例

ここでは、実際にサロゲートモデルを活用した製造業の事例をいくつかご紹介します。

事例1:自動車部品メーカーにおける構造最適化

ある自動車部品メーカーでは、部品の軽量化と強度確保を両立するため、構造最適化解析を実施していました。しかし、従来のCAE解析では1回あたり数時間を要し、最適化設計には膨大な時間がかかっていました。

そこで、過去の解析データをもとにサロゲートモデルを構築。AIモデルを活用することで、設計パラメータを変更した際の応答値(強度・変形量など)を瞬時に予測できるようになり、最適化サイクルを大幅に短縮。最終的には、従来比で設計期間を1/3に短縮することに成功しました。

事例2:家電メーカーにおける熱解析の効率化

家電製品の熱設計では、発熱部品の配置や冷却構造の最適化が重要です。従来は、複数の設計案ごとに熱解析を繰り返していましたが、サロゲートモデルを導入することで、設計案ごとの温度分布や冷却効果をAIが即座に予測。設計案の絞り込みや最適化が迅速に行えるようになり、開発リードタイムの短縮とコスト削減を実現しました。

事例3:重工業メーカーにおける振動解析の自動化

大型機械の振動解析では、複雑な構造や多様な運転条件に対応する必要があります。サロゲートモデルを活用することで、運転条件ごとの振動応答をAIが予測し、異常検知や設計変更への対応が容易に。現場担当者の負担軽減と、設計品質の向上に寄与しています。

サロゲートモデル構築のための相談/体験会ご案内

電通総研では、サロゲートモデルをはじめとするAI技術の設計・開発業務への活用を推進するため、以下のイベントを開催します。

EngineeringAI相談会 ~サロゲートモデル編~

開催日時:①2025年10月14日 ②2025年11月11日
①10:00~11:30 ②13:00~14:30 ③15:00~16:30

開催方法:オンライン

対象業務:製造業の設計・開発、CAE解析、社内知見の活用

対象者:AIの活用やサロゲートモデルに興味はあるが何から始めるべきかわからない方、専門家に相談したい方

参加するメリット:

  • 設計・解析業務でのAI活用に関する課題やお悩みを、電通総研のコンサルタントに相談できます。
  • 1コマ1社限定参加のため、他の参加者に知られたくない内容でも安心して相談ができます。
    ※お聞きしたお客様の情報は電通総研の情報セキュリティ保護方針に従い適切に取り扱います

体験会の詳細・お申し込み方法については、電通総研の公式ウェブサイトまたは担当営業までお問い合わせください。定員に限りがございますので、お早めのご予約をおすすめいたします。

まとめ

製造業の設計・開発業務は、今まさにAI技術による大きな変革期を迎えています。CAE解析の効率化や設計最適化、ノウハウの形式知化など、AIを活用したサロゲートモデルは、ものづくりの現場に新たな価値をもたらします。

電通総研は、50年にわたるCAE支援の実績と、AIトランスフォーメーションセンターの知見を活かし、最先端のAIソリューション「EngineeringAI」をご提供しています。ご興味のある方は、お問合せを頂くか、10月と11月開催のEngineeringAI体験会 ~サロゲートモデル編~にお申込みください。

設計・開発業務のさらなる効率化・高度化を目指す皆様、ぜひこの機会にEngineeringAIの世界をご体験ください。


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