iQUAVISはシステム設計、プロジェクト管理、リスク管理、要求分析・管理ツールとしてご活用頂いているツールです。製造業で求められる機能を中心に開発・提供してほぼ20年が経ち、今は様々な業種のユーザー様に活用されるようになりました。
iQUAVISのヒストリーには、主な機能開発・提供の歴史を示しており、2018年よりiQUAVISのオープン化という意味で、Application Programming Interface(API)を提供して、他システム間連携や顧客独自の機能開発ができるようになりました。本記事では、そのAPIを使ってプロジェクト管理手法の一つであるEVMをiQUAVISのデータを活用して適用する方法を簡単に紹介します。
※iQUAVISのAPIを使用したツール間連携に関する詳細情報は、ツールチェーン事例でご確認頂けます。
EVM:Earned Value Managementの略で、プロジェクトの計画を期間・コスト観点で管理する手法。
アーンド・バリュー・マネジメント(Earned Value Management:EVM)は、プロジェクトのスコープ、スケジュール、コストのパラメータを統合し、プロジェクトのパフォーマンスを客観的かつ定量的に測定するプロジェクト管理手法です。EVMを使用することで、プロジェクトマネージャーやステークホルダーは、計画された作業と予算を実際の成果および支出と比較し、プロジェクトの進捗とパフォーマンスを評価できます。EVMは、プロジェクトのスコープ、スケジュール、コストの3つを統合して管理することが特徴です。
本ブログで活用するiQUAVISのプロジェクトは、航空用APQP-PPAPのブログの説明で使ったプロジェクトを例(図1)にします。各タスクは開始日・終了日(期間)情報以外に、担当者やアサインされた工数情報も含んでいます。そして、毎日実績(タスクに%で進捗や投入工数)を入力するような運用と仮定します。
プロジェクトマネージャーは、主にこのプロジェクトの日程表を確認しながら、各タスクの進捗が確認でき、必要に応じてタスク担当者に状況を確認するような動き方になると想像されますが、計画時に想定されていたすべてのタスクに投入する工数比実際投入された全体工数を確認しようとすると、今のiQUAVIS機能ではワークシートでタスクごとに確認することしか出来ないことがわかります(図2)。
プロジェクトの全体としての進捗状況や工数投入状況を計画時と比べてどうなっているかを確認する際には、上で説明したEVMデータを確認する方法が一つの案かと思われます。一般的にリソース(人件費)単価の異なる人が混ざって遂行されるプロジェクトでは、計画工数対投入工数のみを比較しても予算の計画対比執行状況を把握することは簡単ではないです。
iQUAVIS Server APIを用いて、サーバーからリソースの単価、該当プロジェクトの各タスクの計画・進捗データを取得して、MicrosoftのPower BIを使って、グラフ等の見える化をしました(図3)。昨年8月から開始したプロジェクトに毎日進捗を入力し、完成時総予算(Budget At Completion:BAC), 計画予算(Planned Value:PV), 出来高(Earned Value:EV), 実際に発生したコスト(Actual Cost:AC)を計算した結果となります。12月の末にはBACが増えたことから何らかのタスクが追加されたか、他のタスクに工数が追加されて全体の総予算が増えたことが予想されます。
そして、Power BIの機能を用いれば、最新のPV, EV, ACを用いて、スケジュール効率指標(Schedule Performance Index:SPI=EV/PV)や コスト効率指標(Cost Performance Index:CPI=EV/AC)を計算して、表示することもできます。SPIは1に近いので、ほぼスケジュール通り(やや遅れ)で、コストとしては、もともとの計画の2倍の工数をかけていることがわかります。工数を2倍に投入してスケジュールをあわせているプロジェクト状況と理解できます。
iQUAVISを活用してプロジェクトを管理する際、プロジェクト日程や投入工数等全体を計画し、プロジェクトの進捗や費用・残りの予算を管理する立場にいるプロジェクトマネージャーとしては、プロジェクトのタスクにアサインされたメンバーがタスクの進捗や投入工数を入力頂くことで、プロジェクトのSPIやCPI状況を「別の整理作業を行わずとも」確認できるようになります。プロジェクトメンバー観点でも、自分で入力した進捗や工数が集計され、プロジェクト全体の状況が把握できるとなるとiQUAVISに入力する意義が見えてくる点ではうれしさがあると感じます。
iQUAVISを活用している状況であれば、APIを活用して更に業務効率化を実現していきましょう。
iQUAVISのデータを使用してEVMのコア要素である以下の4つを計算するには、各タスクにアサインされるリソース(担当者)やそのリソースの単価の確保が必要です。
本事例では、リソースの属性(スキル、SkillLevel)にリソースの単価を設定して使用します。(※制限事項1:リソースのスキル属性に月単価を入力して使用するため、一つのリソースに対し複数の単価を指定することはできない)
そして、iQUAVISのタスクには、タスクに期間とアサインリソース(担当者)、そのリソースの割当工数があれば、(工数費用のみを考慮した)プロジェクトのBACや、ある時点で得られるべきPVを計算することができます。特にPVの計算には、タスク期間中の稼働日を確保し、割り当てられた工数を計算する必要があるため、プロジェクトのカレンダー(稼働日)データの確保が必要になります。プロジェクトが進むにつれ、各タスクの進捗やかけた工数を入力していくと、EVやACが算出されるようになります。
例えば、下のようなタスク配置や割当工数、期間(稼働日)の状況である場合、(工数の費用のみを考慮した)BACの「計算」は、各タスクのアサインされた人の単価 × アサイン工数の合計になります。
例えば、「本日」が「タスク2」の8日目にかかっている状況だとした場合、PV値は、タスク1のValue(アサイン工数5人日 × 日単価) + タスク2の本日までのValue(本日までのアサイン工数(7/10) × 日単価)となります。※月単価を20日で割って計算しています。
上記と同じ日に、実績として、タスク1は100%完了、タスク2が50%完了の中で、各タスクにアサインされた人の工数がタスク1では計画通り5人日、タスク2ではAさんが2人日、Bさんが4人日だとした場合、EVとACは下の式で計算されます。
BAC, PV, EV, ACの値が求められたら、コスト・スケジュール観点で、パフォーマンス指標や差異が下の式で計算できます。コスト面では100円得られるべき状況で、86円(CPI=0.86)しか得られていないし、スケジュール観点では、本来の計画より88%(SPI=0.88)しか達成できていないことがわかります。そして、残りの作業を完了までかかる費用(Estimate To Complete:ETC)として、364,863円予想され、すでにかけた費用(AC)900,000円を考えると、完了までの費用(Estimate At Completion:EAC)は、1,264,863円となる結果になります。
上記の結果より、EVMのコア要素が計算できれば、その他のパフォーマンス指標や差異等が計算されることがわかりました。下の図ではEVMコア要素計算にiQUAVISのどのタスク情報が必要になるかをわかりやすく表現したものになります。
上記の計算式に基づき、プロジェクト計画の初日から最終日までPVの値や本日付けのEV, ACについて計算した結果が得られます。
※iQUAVIS API/SDK ICCへのアクセスにはiQUAVIS APIのご購入が必要です。
上記の計算結果からは、過去のEV, ACデータを算出することができないため、過去の時点での進捗状況をベースに計算したEV, ACデータをデータベースとして格納して置く必要があることがわかります。
データベースを用いたEVMの計算フローを整理すると下図となります。
DBのテーブルとして、projects, tasks, EVMDataの3つを用意していて、tasksについては計画情報や実績情報をすべて記録するようにしています。EVMDataテーブルを利用し、プロジェクトの初日から本日まで出力することで、CSVデータ出力が簡単に行われるようになりました。ただ、PVはプロジェクトの終日までデータを持っているので、出力してグラフ化することも可能です。このようなデータベースを活用することで、毎日のタスク進捗の差分を確認したり、AIに進捗データをインプットして活用したりすることも今後考えられます。
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