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クラウド利用でCFD解析の業務効率化とコスト抑制が達成できる理由5選

前回記事

前回はCAE環境のクラウド移行のメリットを紹介し、特にCFD解析に関しては他の解析分野よりもメリットが大きいことについて少し触れました。
今回は過去の私のCFD解析の業務経験や現在のクラウドHPC/CAEソリューション担当の経験を踏まえて、CFD解析のクラウド移行のメリットを深堀してご紹介します。

その1 クラウドであれば、日々のハードウェア稼働率を気にする必要がない ~Azure CycleCloudの活用事例~

前職の解析業務の経験から、構造解析や衝突解析、熱解析は設計開発サイクルの中で定常的に解析業務が発生するためハードウェアの稼働率が安定しています。耐久性や耐熱性は必ず満たす必要のある設計要件が多いため、設計開発サイクルの中に明確に組み込まれています。
一方、CFD解析に関する解析業務は波があることが多く、ハードウェアの稼働率が安定しないケースが多いと感じます。理由としては計算時間が長いCFD解析を設計開発サイクルに組み込むのはハードルが高いため、どうしても事前に確認が必要な性能検証やトラブルシュートのために実施することが多かったと感じています。もちろん設計開発サイクルに組み込まれている業務もありますがかなり簡略化したものや2次元化した解析が多く、複雑な3Dモデルでの解析が組み込まれているケースは稀でした。自身もかなり製品開発が進んだ段階や製品リリースされた後にトラブル対応をしたことがありますが、より早い段階で解析をしていれば未然に防げたものもあるのではないかと思うこともありました。しかし、ハードウェアのリソースも限られている中で大規模なCFD解析を決まった設計期間で実施することはハードルが高いことも事実です。そこでクラウドの出番になります。
クラウドであれば必要な時に必要なリソースだけを使うことができるため、オンプレのように稼働率を気にする必要がありません。文字通り、使った分だけコストが発生する形になります。
解析モデルの規模やジョブ数に応じて自動でハードウェアを起動・停止する仕組みを作ることも可能です。例えば、AzureではCycleCloudというサービスが既に用意されています。CycleCloudサービスを利用すれば、以下のような自動でハードウェアを起動・停止する仕組みを容易に構築することができます。

【その他のCFD解析の業務効率化におすすめのクラウド】

弊社が提供しているSaaS型のクラウドHPC/CAEサービス「Rescale ScaleX」でも自動でハードウェアを起動・停止する仕組みを提供しています。Rescale ScaleXはそれ以外にも多数の機能を揃えているので、すぐにクラウドに移行したいというニーズに適しているサービスとなります。

その2 クラウドであれば、大規模CFD解析がいつでも実施できる

CFD解析は比較的大規模な解析が多く、数百コア、数千コア、時には億単位のコアを必要とするケースもあります。オンプレでこの規模のリソースを用意するのは簡単ではないですが、クラウドであれば数千コア程度はすぐに用意することができます。もちろん、大規模に利用した場合もコストは使った分だけ課金になるので大規模解析に気軽にチャレンジすることができます。
クラウドでもリソースは有限ですが、日本だけでなく世界中のデータセンターのリソースを活用することができます。以下はAWSのリージョン情報ですが、これからも世界中にデータセンターが新設される予定です。

その3 クラウドであれば、最新のハードウェアがすぐに利用できる ~CFD解析でAMDを積極的に利用する~

CFD解析はハードウェア性能が計算性能(計算時間短縮)に大きな影響を与えるシミュレーションになります。オンプレの場合、導入後数年はハードウェアが固定されてしまうため計算性能が向上するのは次のハードウェア更新のタイミングになります。計算性能向上は業務効率にも大きなインパクトがありますので急速にテクノロジーが進化する時代では競合他社に大きく差を拡げられてしまう懸念があります。
一方、クラウドであればリリースされたばかりの最新のハードウェアを利用することが可能になります。昨今はハードウェアの中でもAMD製品が注目されています。AMDは1ノード当たりのコア数が多いため小規模解析には適していませんが、CFD解析のようなコア数が多く必要な解析には最適といえます。先日、Azureから最新のHBv4(Genoa-X)がリリースされましたが、以下のように過去のAMDコアと比較して各アプリケーションで計算性能が大幅に向上しています。

その4 クラウドであれば、CFD解析結果のデータサイズを気にしなくていい

CFD解析結果のデータサイズは大きく、非定常解析を実施すると1ケースで数十TBといったサイズになることもあります。オンプレの場合はいくらストレージがあっても足りないためユーザは都度必要なデータを選定し、最後に解析結果は全て削除して入力ファイルだけ残しておく、といった作業をすることが多々あります。手戻りが発生した場合に構造解析や熱解析であれば解析時間が短いので入力ファイルから解析をやり直すことができますが、CFD解析の場合は結果が出るまでに何日もかかるケースもあるため悩ましいところです。
そこでクラウドを利用することでストレージに関する悩みも解決することができます。まず、クラウドであればストレージ容量を簡単に拡張することができます。オンプレであればストレージ増設の社内申請をして、ハードウェアが届くまでに長いリードタイムが発生しますが、クラウドであればボタン一つで拡張することができます。さらに、クラウドにはストレージコストを節約する方法があります。1つ目は以下に示したAWS S3のような安価なオブジェクトストレージを利用し、データ保管の仕組みを構築することです。2つ目はデータ削除のライフサイクルを設定し、ある期間が経過したファイルは自動で削除する設定をすることです。お客様の中には、この2つを実施することでクラウドのストレージコストを1/10程度まで下げることができたお客様もいます。
クラウドと言えば計算機に目が行きがちですが、ストレージの観点でもCFD解析をクラウドに移行するメリットは大きいと考えています。

その5 クラウドであれば、GPUマシンによる検証が気軽に可能

様々なCFD解析ソフトウェアがGPU計算に対応し始めており、GPU計算によって計算性能向上した結果が出始めています。例えば、ANSYS FLUENTでは以下のようにCPU計算の結果と比較して1GPUで約5倍、8GPUだと約33倍といった大幅に性能向上した結果が示されています。
クラウドであれば、GPU計算にチャレンジしてみたいといった場合に各クラウドプロバイダが様々なGPUマシンを用意しており、気軽に試すことが可能です。このような新しい試みにチャレンジする場合にもクラウド利用には大きなメリットがあります。

弊社ではクラウド利用を含めて、CFD(熱流体解析)活用支援を積極的に実施しておりますので是非お問い合わせください。