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AI導入の進め方とは?注意点や失敗事例もご紹介!

国内のAI導入状況

AI導入が遅れていると言われていた日本でも昨今AIの導入が進んでいます。PwC Japanグループが発表したAI導入に関する調査を含んだレポート「2022年AI予測調査(日本)」(※)では、2022年において「全社的にAIを導入している」および「一部導入済み」の企業が53%で、2021年と比較しても10ポイントの増加と、導入が進んでいる状況が見て取れます。

※PwC Japanグループ, 2022年AI予測(日本), https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2022-ai-predictions.html#content-free-1-1ddf

AI導入事例

国内企業におけるAI導入においては、昨今AIの内製化に関するご相談をいただくことがあります。ある企業様からは収集したデータを活用するためのプラットフォームを構築し、社内のAI導入を進めていきたいというご相談をいただきました。AI導入については社内の各部門や部署単位では行われているものの、統一的に行われていない状況でした。そこでAI導入を進めていたメンバーに参加いただきながら、検証したいプラットフォーム上での一連の検証や実運用のご支援を行いました。

上記のように、企業内にAI導入を進められる方がいらっしゃる場合もあります。一方で「AI導入に向けた進め方が分からない」というご相談をいただくこともあります。以下ではAI導入の進め方をステップに分けてご紹介し、それぞれの注意点や失敗事例をご紹介いたします。

AI導入の進め方 ステップ1:AIを導入するテーマの決定

まず初めに、AIを導入するテーマを決定していきます。導入候補の業務を一覧にして優先順位を付けることができれば、継続的に導入を進めることができます。注意点としては、テーマのビジネス的な効果・価値(つまり、AIを導入することで実現できるコスト削減や省力化など具体的なメリット)と、データの観点で実現性が十分かという両面から優先順位を評価する必要があることです。データの観点での実現性とはテーマに対するデータの量や内容、簡易に入手できるかなどです。

以前、「クレーム分析のためのAIを導入して担当者の作業量を減らせないか」というご相談をいただいたことがあります。業務としては半年間に蓄積したクレームを再確認して分析サマリを作るという内容で、担当者1人が1週間程度かけて実施していました。たしかに担当者にとっては負荷が大きいかもしれません。しかし効果としては最大で年間2週間分の業務削減にしかならないテーマでした。加えてAIがサマリを作成する場合でも担当者が確認・修正をすることが想定され、さらに削減効果は少なくなることが見込まれます。AIの構築・検証、システムの構築や運用・保守を考えるとコストの面から割に合わない(ビジネス的な効果が出せない)可能性が高く、結局テーマの検討段階で断念した事例になります。

ビジネスに対する効果・価値は業務に詳しい方のみでもある程度推定できますが、データの観点での実現性はデータサイエンスの知見が必要になります。ISIDではこれらの整理を容易にするテンプレートを含んだご支援―Ausicalを提供していますので、興味のある方はご覧ください。

また導入するテーマの案だし・決定のために、まずはAIの基礎を学んでみたいという方に向けて、AI/機械学習基礎講座を無料で提供しており、その第1回として30分で学べる基礎解説の動画をご準備しています。興味のある方はご覧ください。

※リンクをクリックした後表示されるフォームからお申し込み後、基礎講座のコンテンツがご視聴頂けます。(2022年12月現在 動画8本)

AI導入の進め方 ステップ2:AIモデルの構築・評価

テーマを選定できたら、次はAIモデルの構築・評価のステップに移ります。AIモデルは構築して評価するまで精度がわかりません。そのためこのステップを実施して、業務で活用できる精度が出るか検証し、活用できる精度であれば実運用に向けたシステム化の検討・構築に移ります。

ここでの注意点は、精度100%や人間と同等のミスのない作業品質を目指すのではなく、業務上活用できるかという視点で評価を行うことです。例えば精度80%でも残り20%を人がダブルチェックすることでAIのミスはカバーでき、業務にかかる総時間が1か月で1000時間削減できればどうでしょうか。十分に導入効果がありそうです。

以前、図面の検索AIプロジェクトに携わっていたメンバーから聞いた事例をご紹介します。プロジェクトでは業務上活用できる精度のAIモデルが構築できて、業務導入に向けた提案の準備をしていました。そしてプロジェクトの終了前に顧客側の担当者が変更になりました。後任の担当者は今までスコープにしていない図面も含めて精度が100%近くないと信用できないということで、モデル構築時に入っていないフォーマットの図面も含めて精度が100%近く出るかという評価を行い、最終的には導入に踏み切れないとの結論が下されたそうです。業務上活用できるかではなく、人間と同等のことができるかという基準で考えた結果、業務への導入やそれによる改善機会を逃してしまった例です。

またAIモデルの評価ではビジネスの目的に沿う評価基準を選択し使います。基礎的な評価基準については以下で紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

AI導入の進め方 ステップ3:システム化の検討・構築

構築したAIモデルが業務で活用できると判断できた場合、システム化の検討・構築に移ります。通常のシステム構築と同様に、AI導入後の業務の流れやシステム上のデータの流れ・他システムとの連携などに関して、要件定義や設計を行い、開発を進めます。

通常のシステムに加えて注意する点が大きく2つあります。1つ目はAIモデルが予測を誤っても対処できる業務・システムの流れが検討できているかです。前述の通り、精度100%でなくても効果・価値を出すことは可能ですが、誤った場合にそれを見過ごせるのか、見過ごせない場合どのようにシステムや人がカバーするかを検討しておく必要があります。

2つ目はAIモデルの時間劣化への対処です。一般的に時間経過とともにAIモデルの精度は低下します。これはデータから学習するというAIの性質上、時間経過とともにAIにとって未知の期間が増えてしまうことに起因します。これに対処するために、継続的なデータの取得・再学習をする仕組みや業務の流れを構築する必要があります。

以前、AIベンダーにAIモデルの構築と運用マニュアルの作成を依頼し納品してもらったものの、継続的なデータの取得や再学習などの運用の手間が大きいという課題をお持ちのお客様がいらっしゃいました。AIモデル構築までは上手く進めたものの、業務やシステム化の検討が詰め切れておらず、結果的に苦しまれていた例となります。

再学習まで考慮した仕組みでAIモデルを構築すれば上記の失敗も防げます。ISIDではOpTApfというAIのモデル構築や運用を自動化するソリューションを紹介していますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

AI導入における内製化とは

AI内製化とは企業自らが主体となってAI導入を進めることを言います。上記でご説明してきた通り、AI導入においては様々な注意点がありますし、上手く進まないこともあります。自らが主体となってAI導入を進めることで、成功・失敗から注意点などのナレッジもたまり、より効果的にAIを活用できます。ISIDではお客様に内製化を進めていただけるようにAI人材育成の支援も実施しています。

まとめ

今回はAIの導入状況や導入事例、AI導入の進め方と各ステップでの注意点・失敗事例、AI導入における内製化をご紹介しました。さらに具体的な進め方や注意点、どのようなデータを準備すべきかなどを解説した動画を準備していますので、興味のある方はこちらからご覧ください。

(ブログ内でご紹介した「機械学習の基礎」を視聴するためのURLと同一です)

またISIDでは全てのステップに対するご支援が実施可能です。また導入が終わった後の運用のご支援もしています。事例やご支援内容が気になる方はぜひお問い合わせください。