技術開発や製品開発の現場でよく使われる「分ければ分かる」ということばについて考えてみたいと思います。
ある大学の先生が、技術雑誌の中で、いろいろなメーカーでよく用いられている「分ければ分かる」ということばの理解として、次のように批判的に書かれていました。
「システムを分けることで部分が分かるようになるので、結果的に部分最適になる」
この表現は、全く適切ではないと思います。何のために分けるのかという視点がないからです。「分ければ(部分が)分かる」ということではなく、本来的な意味は、「分ければ(全体が)分かる」ということだと思います。分けることで部分を理解することができ、その結果として、本来の目的である全体を理解することができるということです。部分を理解できなくては、当然ながら部分の組合せである全体を、各部分間の関係性を含めて正しく理解することはできないからです。上記のことがらを図で示すと次にようになります。
図1 部分を理解する
対象とするシステムをスタートとして、次のような手順になります。
図で「×」で示していますとおり、2のサブシステムの理解を基にした部分最適化は行いません。
目的と手段の関係で示すと、次のようになります。
つまり、システムを分けることが必要ということです。全体として、「分けて、整理して、繋ぐ」ということそのものです。図の中に、関連する方法論や手法の例も示しています。
システムを部分やサブシステムに分けて理解するには「機能モデル化」を用いますし、その分けて整理するという進め方は、システムズ・エンジニアリング(SE)の考え方の一部と同じです。理解された部分やサブシステムを適切に統合して全体を表現する方法として、品質機能展開(QFD: Quality Function Development)があります。そして、統合された全体システムの最適化を実現するには、品質工学(QE: Quality Engineering)を用いることができます。
本記事は、2019年10月から2021年12月に掲載された岡建樹が執筆したコラムを再編成したものです。