近年、システムの複雑化に伴い、故障診断の精度向上が求められています。PHM Technology社のSyndrome Diagnosticsは、MBSE(Model-Based Systems Engineering)を活用し、センサ配置の最適化と故障原因の特定を可能にするソリューションです。本稿では、その仕組みを解説します。
Syndrome DiagnosticsとはMBSEモデルで分析したセンサデータとリアルタイムの監視センサデータを照合し、効率的に故障を検知・診断するツールです。
Syndrome Diagnosticsの基盤となるMBSEモデルには、PHM Technology社が開発したMADE(Maintenance Aware Design Ecosystem)を使用します。MADEは、システムの設計段階から診断可能性を評価し、最適なセンサ配置を決定するためのMBSEツールです。
MADEの主な特徴:
Syndrome Diagnosticsでは、MADEのMBSEモデルで導き出されたセンサ分析結果と、リアルタイムの監視センサデータを照合することで、故障診断の向上を図ります。
まず、MADEを活用し、システムの構造をモデル化します。これにより、各コンポーネントの相互関係を可視化し、故障がどのように伝搬するかを解析します。
故障が発生した際のシステムへの影響度などを設定することで、重大な故障の検知を優先するセンサ設計が可能になります。
システムの各部品間の因果関係をモデル化することで、異常が発生した場合の影響を自動的に一覧表(伝搬表:Propagation Table)として生成します。
MADEモデルではシステムまたは部品の出力を、「定常状態」「異常上昇」「異常低下」の3パターンで表現し、伝搬表では、あるシステムまたは部品の異常発生時に他部品の出力がどのように変化するかを特定できます。
リアルタイムのセンサデータを分析し、異常発生時にどのコンポーネントが原因かを特定します。センサの振る舞いが一致すれば、故障原因を明確に特定できます。MADEモデルとリアルタイムデータを照合することで、誤診のリスクを軽減し、迅速な修理やメンテナンスが可能になります。
例として、ある部品の故障時のセンサの振る舞いの組み合わせが図6であるとします。
運用中のシステムで、異常発生時のセンサ反応の組み合わせが図7のようになったとします。
伝搬表で得られた特定の部品故障時のセンサ反応の組み合わせと、リアルタイム監視で得られたセンサ反応の組み合わせを比較することで、故障原因を特定します。
このように、機器やシステムの因果関係をモデル化し、故障発生時の「振る舞い」を設計段階で分析しておくことで、運用中の故障原因特定を速やかに行い、迅速な整備に繋げることが出来ます。
PHM Technology社のSyndrome Diagnosticsは、MADEを基盤としたMBSEモデルを活用した故障診断ソリューションです。システム設計段階での診断可能性評価、最適なセンサ配置、リアルタイムデータとの統合を通じて、より効率的な故障診断を実現します。
航空宇宙・自動車・製造業など、あらゆる分野での活用が期待されるこの技術にご興味のある方は是非お気軽にお問合せください。
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