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電通総研、空飛ぶクルマ社会に向けての挑戦

空飛ぶモビリティの国際標準化への参画

電通総研は、国連機関の一つであるICAO※1 主催の国際シンポジウム、第1回 ICAO Advanced Air Mobility Symposium <I-AAM 2024> に参加してまいりました。ここまでの活動を通じて見えてきた空飛ぶモビリティの世界的な動きを、簡単ではございますが、報告させていただきます。

※1 International Civil Aviation Organizationの略で、日本語では「国際民間航空機関」と呼ぶ。

日本では「ドローン」や「空飛ぶクルマ」と呼ばれることの多い、新たな空域を活用した次世代航空交通技術(システム)。当該技術をAAM(Advanced Air Mobility)と呼ぶ方向に統一される見込みとなりました。この記事でも、以降、「AAM」と呼ぶことにします。

AAMは、新しい空域や飛行方法で実現する航空交通システムのことです。新しいカテゴリの航空機や推進技術を利用し、デジタル化、自動化(自動操縦含め)などの高度技術により、今までにない新しいサービスや移動手段を提供する次世代航空交通システムです。

電通総研では、2022年以来、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募事業「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」(通称ReAMoプロジェクト)に東京大学コンソーシアムメンバーとして参画して参りました ※2。いわば、新技術の社会実装と新産業の推進を実現するための産官学連携プロジェクトであり、ルールメーキングや国際標準作りへの参画とも言えます。

※2 ISID、NEDO公募事業「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」に東京大学コンソーシアムメンバーとして参画(2022年8月プレスリリース)

航空宇宙産業では国際協調が不可欠です。しかし、これまで、我が国の製造業やサービス業では苦手だったところではないでしょうか。欧米企業は、競争領域と非競争領域を巧に使い分け、非競争領域においては標準化を推進し、一方で日本国内では企業横断的な標準化の取組みはなかなか進まず、気づけば、出来上がった欧米標準を一方的に押し付けられるということを、多くの日本企業が経験してきたのではないかと思います。

航空宇宙産業ではむしろ、積極的にお互いの経験から学んだ課題や問題を共有し、国際的議論の場で共有し、解決事例を標準化しようとしています。競争領域は各社維持しつつも、積極的に国際ハーモナイゼーションを推奨し、競合同士が協力して標準化を推進しています。

元々電通総研の社名は「電通国際情報サービス」。電通とジェネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社でした※3。GEのDNAを引く電通総研として、国際標準作りへの参画は使命と言えます。

※3 ヒストリー | 電通総研とは | 電通総研

ICAO's First AAM Symposium 2024への参加

そのような流れの中で、電通総研は、2024年9月、モントリオールのICAO本部で開催された第1回 ICAO Advanced Air Mobility Symposium <I-AAM 2024> に参加してまいりました。全世界から1400人、日本からも30人以上の方が参加されていました。

図1. AMSIP ICAO's First AAM 2024 報告会資料より抜粋
図1. AMSIP ICAO's First AAM 2024 報告会資料より抜粋

本会議では、本格的な空飛ぶクルマの社会実装に向け、産業界からはルールや標準など、産業発展には様々な課題があることが指摘されました。また一方で、航空機関や監督官庁(Regulator)からは、AAMSDGsに対する意義と新たな統制や規制に対する各国への協力が呼びかけられました。

なお、先般、エアーモビリティ社会実装促進研究会(AMSIP)にて、I-AAM 2024出張報告会を実施しました。AMSIPは無料で会員登録ができます。会員登録していただきますと、出張報告会のアーカイブ動画を視聴可能です。ぜひご視聴いただければ、幸甚です。

・関連記事:空飛ぶモビリティの国際シンポジウム参加報告(2024年9月25日)のご案内
・関連リンク:エアモビリティ社会実装促進研究会:AMSIP(電通総研の社外へリンクします。)

図2:I-AAM2024の会議風景
図2:I-AAM2024の会議風景

空飛ぶクルマ社会に向けての挑戦

電通総研では、次世代航空交通システムであるAAMと、その先の宇宙空間を利用する新しい産業の社会実装を見据えた新たな挑戦にも取り組んでいます。既存のソリューションやテクノロジーを発展させるだけでなく、新たなソリューションの構想・開発(図3)や人材育成※4 にも携わっています。

将来活発化するであろう空域を三層に分け、私たちは「ソラ」(さんそら)という愛称を付けました。三つの空とは、

  1. 低軌道や成層圏なども含む高高度空域
  2. 空飛ぶクルマやヘリコプタが行き交うであろう中高度空域
  3. ドローンなどの活用が活発化するであろう低空域

を指します。それぞれの空域交通を高度な技術で支え、空の安全を守り、現在の自動車による二次元移動のみならず、三次元移動に発展させ支えるための様々な技術をご提供すべく、挑戦していきます。

今後も本領域における取組みについて、情報発信していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

※4 人材育成プログラムの例

三菱重工業様共催「航空機開発人材育成ソリューション紹介ウェビナー」(2024年10月)
AeroVXR社による「航空機型式証明入門 ~機体開発の世界に触れてみよう~」講義動画
東海大学 今村教授によるPHM人材育成講座(PHMとは故障予知保全のこと)

図3:ソリューション構想の例
図3:ソリューション構想の例

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