HVACシステムの ビッグデータ解析

HVACシステムの ビッグデータ解析

ダイキン工業株式会社

空調システムの稼働データから故障を予知するヘルスモニタリングに取り組む。

世界各国で空調サービスを展開するHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)システムのグローバル・リーディングカンパニーであるダイキン工業。同社は2015年にテクノロジー・イノベーションセンター(以下、TIC)を設立。異業種・異分野の技術を持つ企業や大学・研究機関との「協創」の取組を積極的に進めています。AIの活用においてもTICを推進拠点として全社を挙げて取り組んでいます。空調システムの故障予知の取組は同社においても取組を進めているテーマですが、この一部を支えているのは、ISIDが米国プレディクトロニクス社と共同で推進するインダストリアル・ビッグデータ PHMソリューションです。
今回、TICでAI活用を推進する小倉孝訓主任技師と黒田耕平の両氏にお話を伺いました。

写真右よりダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 小倉 孝訓氏 (主任技師)黒田 耕平氏


> 冨岡「故障予知のデータ分析に取り組むきっかけは何だったのですか?」

> 黒田「弊社では"エアネットサービス"というIoTの仕組みとサービスを提供していたため、実はデータは取れていて、故障時に迅速な対応が出来るようこれを役立てていました。さらに、ダウンタイムそのものを最小化したいというニーズと相俟って「早期故障検知」(※同社ではこれを故障予知と呼んでいる)に取り組むことになりました。」

> 冨岡「弊社のような外部の会社と一緒にやろうと思われた、そのあたりの経緯も教えて頂けますか?」

> 黒田「世間の水準を知りたい、というのが一番でしょうか。もちろん自分達でもやっていましたし、これからもやって行くのですが、より進んだレベルの知見を得たい、というのが動機です。先程、データは取れていたと言いましたが、今取得出来ているエアネットのデータが本当に使えるのか否かも実は確信が持てていなかったので検証したかった、というのもあります。」

> 冨岡「なるほど。では、色々な会社さんを見られたと思いますが我々を選んで頂けたポイントは、ズバリ何でしょうか?言いにくいかな(笑)。」

> 小倉「言いにくいですけど(笑)。ハッキリしていたのは、多くの会社さんはツール提供型のビジネスでしたね。「故障予知の技術を提供する」、というよりは「故障予知が出来るコンピューティング・リソースを提供する」という所が多かったのですが、ISIDさんやプレディクトロニクスさんは回転系機械でのデータ分析の経験値も含めて、まさに近しい分野での分析そのものの技術力を持っておられるという点に期待を持ちました。」

> 冨岡「そんな期待を持ってプロジェクトをやってみて、率直に言ってどうでしたか?」

> 黒田「実際面白かったです。分析のアプローチなんかも自分が思っていたのとはちょっと違っていて。」

> 冨岡「どんな風に違っていました?」

> 黒田「正常モデルとの乖離を見る見方とか...あんまり言うとマズくないですか?(笑) とにかく、自分がそれまで思っていたやり方とは異なるアプローチで勉強になりました。後はISIDさんがよく言う「ホワイトボックス型」だと思うのですが、分析モデルの中身もさることながらその作り方まで教えてくれるので、プロジェクトが終わった後に後追いで自分なりに確認が出来て、結果的にちゃんと技術を吸収することが出来たなと思います。」

> 冨岡「そう言っていただけるととても嬉しいです。プレディクトロニクスのデータサイエンティストはCTOのDavid Siegelを始めとして、機械系の故障予知・診断技術では世界最高レベルのスペシャリストなのですが、彼らの凄さってどう感じましたか?」

> 黒田「とにかくアプローチの引き出しが多いことに、ビックリしました。あと圧倒的なスピードですね。今回のプロジェクトでは、正直言ってデータを整理整頓せずにガサーッとISIDさんにお渡ししてしまったのですが、あれを元にして3ヶ月でやり切ったのには驚きました。こんなデータで出来るのかな、とか、本当にどこまで分析モデルが作れるのかな、とかいざ始めるまでに色々思い悩んで足が進まない人達も多いと思うのですが、まずやってみる、ということが大事だなと思いましたね。」

> 小倉「あとは、データ分析の進め方もとても参考になりましたね。お陰様で自分達がデータ分析を推進していく中での課題も明確に整理出来ました。」

> 冨岡「なんだか褒め殺しにあってるみたいですね(笑)!さて、では最後に今後の展望をお聞かせ下さい。」

> 小倉「せっかく構築出来た技術をどうビジネスに活かすか、だと思っています。また、故障診断に向けては教師データの大切さも再認識しましたので、如何に使えるデータを集めるか、という点も力を入れていきたいと思います。故障予知に関してはある程度ロジックも確立出来ましたので今後は時期を推定するレベルまでチャレンジしたいな、と思いますし、診断についてはどこの部品が壊れているのか、といった診断レベルの詳細化にまで取り組んでいければとも考えています。いずれにしても、ISIDさんやプレディクトロニクスさんのデータ分析の知見が我々の身について、今後それを活かしていけそうだな、という期待を持っています。」

> 冨岡「ありがとうございました。今後さらに御社の取組が進みますことを私も期待していますし、新しいプロジェクトをまたご一緒出来ることを楽しみにしています。」

以上

会社名
ダイキン工業株式会社
取材年月
2022年4月